佐々木 眞
私が住んでいる町では、毎日ゴミを選別して出さなければならない。
毎朝8時20分までに町内のゴミ置き場にゴミを出すのは、
私の仕事である。
月曜日は、燃えるゴミの日。
火曜日は、段ボールや本や新聞や衣類の日。
水曜日は、さまざまな草や木や薪を出す日。ペットボトルもこの日に。
木曜日は、もう一度、燃えるゴミの日。
金曜日はプラスティックや燃えないゴミ、ビンや缶を出す日だが、
最近その分量がどんどん増えてきたために、週に1回だけではパンクしそうだ。
そして土曜日は、子供会が特別にカンを収集する日である。
けれど、日曜日はお休み。誰も、何も、出さない。
そこである日のこと、私はふと思いついた。もはや巨大な粗大ゴミと化した私を、当局には多大な御迷惑をお掛けしてしまう訳ではあるけれど、市の収集車で運んでもらって、思い切りよく処分していただこうではないか。
私は妻にも相談せず、長い時間をかけ、汗みどろになって私の全身に丁寧にヒモを掛け、芋虫のようになった私を、えっちらおっちら和泉橋のたもとの、いつものゴミ捨て場に自力で運んだ。
待つことしばし。風に乗ってどこかから「エリーゼの為に」のメロディが流れてきた。イ長調、ロンド形式のピアノ曲。編曲はいまいちだが、やせてもかれてもルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの原曲だ。
わが家で夢中になって見ていた連続ドラマ「風のガーデン」の主題歌が、わが町の収集車のテーマ音楽にもなっているようだ。
さあ、いよいよやってくるぞ。早く来い。やって来い。
35年間にわたって日本一高いともいわれる市民税を黙って払い続けてきたのだから、
始末に負えない難儀なこの私を、どうぞ捨ててくれ。どっか遠いところに持ってってくれえ。
と、私は願った。ある晴れた日曜日の朝に。