あきれて物も言えない 15

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 
 

ナガサキアゲハと会った

 

ここのところ猛暑が続いている。

7月の終わりまで長雨が続いていたことが嘘のようだ。
今日の浜松は気温が40°Cを超えたということだ。
日本の最高気温を記録したとTVのニュースで言っていた。

40°Cというのはヒトの体温よりも暑い。
外にでて日射しの下に長くいたら熱中症で死んでしまうだろう。
猛暑というのか酷暑というのか。
こんな夏を灼熱の地獄といったらもっと酷い場所に居られる方々からお叱りを受けるだろうか?
しかし2020年のこの夏のことは、たぶん忘れられないだろうとわたしには思える。

コロナウイルスが蔓延しているにも関わらず世界の指導者たちは経済を優先した政策を取っている。
日本も同様に感染者数が増加しているなかで「Go To トラベル」事業という政策に舵を切った。
アメリカもロシアもブラジルもインドも指導者の政策により灼熱の地獄に向かっている。
日本も政治の無策が続いている。

中国は香港国家安全維持法により地獄への道を選んだ。
中国は国内においても、チベット、香港においても、国家の安全を維持するためというよりも、
共産党独裁体制を維持するための法案を作り人々の生と生活の自由を取り締まろうとするだろう。

ここまでくると国家というものを動かしている指導者たちの動向が日々の中に見えてくる。
国家の政治というものがいかに偏ったものであるかが見えてくる。
その偏りに巣食っている者たちがいるのだろう。

国家という枠組みを考えなおす時ではないだろうか?
国家は本当に人々に利益をもたらしているのか?
むしろ国家はわざわざ世界の人々を分断させていないだろうか?
国家は暴走することをわたしたちは知っている。
国家の指導者たちの暴走をわたしたちは監視する必要があるだろう。

また国家を超えて人々が繋がるようなシステムをわたしたちは構想するべきではないか?

朝、ナガサキアゲハと会った。

女が出掛けるのを犬のモコと見送り、
モコを抱いて、
木蓮と南天と金木犀、あじさいに水をやり、
ヤブタビラコに水をやる。

ふと見上げると金木犀の枝に蔓を這わせて咲いたノウゼンカズラの花に赤い斑点がある黒揚羽が舞い降りてきたのだった。

ナガサキアゲハだった。

ナガサキアゲハが、
ふわふわと舞い降りてきてノウゼンカズラのオレンジ色の花にとまったのだった。
この灼熱の日にナガサキアゲハはノウゼンカズラのオレンジの花にふわふわと舞い降りてきたのだった。

その無垢に眩暈がした。

この灼熱の世界を見て、
この灼熱を引き受けて、
原初がもういちど世界を形成するのを見るようだった。

 

ナガサキアゲハと会った。
ほとんど言葉がありません。

 

作画解説 さとう三千魚

 

 

 

猫が生きて死ぬくらいの期間

 

工藤冬里

 
 

https://youtu.be/A0d979c-6Xo

 

猫が生きて死ぬくらいの期間
執行猶予が続いた
いろんな永遠があった
ラカンは結局全部間違ってるんじゃないか
十分に猫だったし十分に似非エッセー人間だった
もう水分の注射も無理で看取ってやってくださいと言われた
一人で死ねる草叢があって幸せだ
帰ってこないので心の中で生き始めていた
心の中で生き始めるとまだ生きているものを殺すことになる
その短い期間が永遠のように感じられる
だから/それでも
瓢箪で人の命の大切さを教えられなければならなかった

 

 

 

#poetry #rock musician

Please bear this fact in mind.
この事実を心に留めておいてください。 *

 

さとう三千魚

 
 

this morning
I saw the woman leave with Moko

I was looking at the back of a white car

I’m going to water the quack

And the lily magnolia
And a fragrant olive

Nandina

I’m going to water

A red-spotted black flycatcher flew over the orange blossoms of a knotweed that had crawled on the branches of a golden osmanthus and bloomed with vines

fluffy and light

family of birds of prey

on a hot day
Are you from Nagasaki?

Please bear this fact in mind *

 

 

今朝
モコと

女の出掛けるのを見送った

白い車の後ろを
見ていた

モコを抱いて
ヤブタビラコに水をやる

木蓮にも
金木犀にも

南天にも
水をやる

金木犀の枝に蔓を這わせて咲いた
ノウゼンカズラの

オレンジ色の花に赤い斑点のある黒揚羽が飛んできた

ふわふわと

ナガサキアゲハか

炎天の日に
長崎から来たか

この事実を心に留めておいてください *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

浚渫船

 

工藤冬里

 
 

おれと同じくらいの白髪だオールバックの白黒は善玉か悪玉か分からないが実を避けているグループがあるなら美を生み出す派手な衣装で着飾っている全て壊され更地にされ戸惑うが全ての紙もティッシュになったのには気付かない金属は原材料の形に戻され石油製品は石油に戻され解かれた繊維は糸巻きに巻き戻された巨大な板状の船が洋上のデブリスを回収して元素に仕分けていく吉本的なものがなぞるだけの籾殻殺されたとしても触れることができないセミでrocket rocket USA名前行列が通り過ぎる冷たい粘土の層が夏の終わりまで続いている虫喰いの東方美人刺蛾の柿の葉を鋏で切るとどうなる✖︎8モーゼズの前をThe Rock, perfect is his activityと言って通り過ぎる楔のwedgeから考えだけでなく欲求や感情がぶつかるように仕向けられるきみがやめるならやめるforever and ever

 

 

 

#poetry #rock musician

はな と グミ

 

村岡由梨

 
 

時計の針が夜の10時を回った頃、
ようやくその日の仕事が終わった。
疲れて、ため息をつきながら
雨に濡れた自転車のサドルを見ると、
パイナップル味のグミが1袋置いてあった。
「?」
一瞬戸惑ったけれど、すぐに誰の仕業か分かった。
傍に、見慣れた文鳥の絵柄のハンドタオルが落ちていた。
雨でグミが濡れないよう、かぶせてあったみたいだ。
タオルは雨に濡れて、砂まみれになっていたけれど、
私は、さっきまで冷たくて硬かった胸の真ん中が、
ジュワッと溶けて、プツンと弾けたような気がした。
タオルを拾って、砂をはらって、グミを手にすると、
急いで自転車にまたがった。
1秒でも早く家に帰りたかった。
はなに会いたかった。

 

こんなことがあった。
今から4年前の夏、
私が名古屋で自分の作品の上映を終えて
東京の自宅へ戻ると、
玄関に、はなが書いた手紙が置いてあった。

「まあ さいしょに たからさがし
くつばこ みてください。」

言われるまま、靴箱を見たら、
また手紙が入っていた。

「まどの近くを みてください。
ヒント 赤と黒シリーズの一つだよ。」

窓の近くを見てみると、また手紙。

「『おめでとう』といいたい ところが まだつづく
2階にいって、本だな 見てみ。
(子どもべやの眠用本だな)」

ねむの本棚を見たら、また手紙。

「かよけのムヒが、階だんにありますと。
ついでに社会の教科書みてね
ちなみに22ページです」

「えんえんとつづく たからさがし
まーた子どもべやの 人形たちをみてごらん」

「リメイクしたような
かわいいママのへやの
ムーミンが さいごの
お手紙をもってるというわけです。」

確かにムーミンが手紙を持っていて、
そこには、こう書かれていた。
「手紙の頭文字 読んでみて」
言われるままに、読んでみた。

「ま ま お か え り」

私が大笑いしていると、
押入れがバーン!と開いて、
はなが、クラッカーをパパーン!と鳴らして飛び出してきた。

はなって、ポコポコと元気に弾けるポップコーンみたいな子だ。

 

こんなこともあった。
今から5年前の冬、私は風邪をこじらせて急性扁桃炎になり
入院することになった。
たった3日間の入院だったけれど、
焼けるような喉の痛みよりも、
娘たちや野々歩さんに会えないことが、とても辛かった。
担当の医師から退院の許可が下りると、
私は急いでタクシーに乗って自宅へ戻った。

娘たちは学校へ行っていて、いなかった。
誰もいない、静かなリビングルームのドアを開けて、
私は思わず息を呑んだ。

冬の朝の冷たい空気で張り詰めたリビングの床に、
折り紙で作られたたくさんの白鳥がきれいに並べられていた。
赤 青 緑 黄色
先頭は、白鳥のお父さんとお母さん。
それに続く、色とりどりの子白鳥たち。

窓から差し込む光が、とてもきれいだった。
こんなに美しい光景を見たのは、初めてだった。
その無垢で一途な気持ちに心が洗い流されて、
もう一度生まれ直したような気持ちになった。

 

はなは、私たち夫婦にとって2番目の子供で、
1番目の子供である、ねむと比べると、
良い意味でも悪い意味でも、肩の力を抜いて育ててきたような気がする。

ねむが赤ん坊の頃は、おしゃぶりを床に落とすと
神経質に熱湯で消毒して冷ましてから口に戻していたけれど、
はなの時は、サッと水で洗ってポイっと口に戻していた。
(こんなことを書くと叱られそうだけれど)

服も、ほとんどねむのお古だった、10月生まれのはな。
ユニクロで買って、洗濯のし過ぎで毛玉だらけになった
黄色とピンク2着のカバーオールを着回して、
私のお布団に入れて添い寝して、
おっぱいをあげながら、一緒に冬を越した。

はなが幼稚園生の頃、
「ママなんか大嫌い!どっかに行って!」
と言って怒ったこともあった。
それを聞いた野々歩さんが、
「ママが本当にどこかに行ったらどうすんの?
ほんとは、ママのこと、好きなんだろ?」
と言うと、はなは、ウンウンと頷きながら
顔をしわくちゃにして泣いて、私にしがみついた。

 

と、ここまで
はなのことばかり書いてきたけれど、
この詩を読んだら、はなは何て言うだろう。
パイナップル味のグミが何より好きな、はな。
折り紙が大好きで、「おりがみ大事典」を見ながら
何でも作ってしまう、器用だったはな。
今はもう、私の身長を追い越してしまった、はな。
きっと「やめてよママ、恥ずかしい」とか
「ママは何にもわかってないんだから」
とか言うだろうな。

でも、詩の中でくらい、
好きなものは好き、
きれいなものはきれいって言わせてよ。

家に帰っても、娘たちはいない。
それは、そう遠くない未来かもしれない。
私の笑った顔が一番好きだと言う、はな。
娘たちを笑顔で「おかえり」と迎えられる、
そんな母親になれたらいいなあ、と思う。

 

 

 

 

また旅だより 24

 

尾仲浩二

 
 

あいかわらずどこにも行けないでいる。
新宿の街にも人が少ない。
そんな新宿の駅前一等地に新しいカメラ屋ができた。
高級感が漂う中古カメラ売場はきっと彼の地の客を想定して作られたのだろう。
10年ほど前に中古で買ったコンパクトカメラが5倍の値段になっている。
ちょっと嬉しいような気もするが、バブルの時代を思い出してしまう。
カメラ屋の一階には新宿の街の大きなジオラマがあった。
写真をもとに作られたジオラマには撮影した時差があって、例えば新宿駅はまだMY CITYだったりする。
そこには僕がバブル前に新宿で暮らした三畳一間のアパートもあった。
もうずいぶん前に取り壊されたアパートだ。
この店が続いてくれて、時々そのアパートを見にいけるといい。

2020年7月19日 新宿にて

 

 

 

 

People at large do not approve of the war.
一般の人々は戦争に賛成していない。 *

 

さとう三千魚

 
 

There are clouds
in the mountains to the west

Seawater evaporates and rises and cools against the mountains

So
become clouds

one day
I was in an air-conditioned room

I was with Moco

looking at the Beach Wind library and
open a book or something

I’m not bored.

People won’t get bored and go to war

War is dictated by our nation’s leaders

evening
I went for a walk with Moco

The asphalt was still hot
The cicadas were distantly groaning

People at large do not approve of the war *

 

 

西の山に
雲がかかっている

海水が蒸発して西の山にあたり上昇して冷やされる

それで
雲になる

一日
エアコンの効いた部屋にいた

モコと
いた

浜風文庫を見たり
本を開いたり

してた
退屈しない

ヒトは退屈して戦争するわけでもないだろう

戦争には
国の指導者の指示がある

夕方
モコと散歩した

アスファルトがまだ熱かった
蝉たちは遠くひくく鳴いていた

一般の人々は戦争に賛成していない *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

方法と結果

 

工藤冬里

 
 

事故に遭ったと言うので急いで出かけて行ったが
事故に遭ったと言うので急いで出かけて行ったが
視程は昨日と同じ
うつくしいメロデー
分厚い本を借りて
光は粒だと
一点の曇りなく
そういえば、で終わる
その怪獣みたいな音はなに
長い慰めのノイズ
楽しいんだろ?
だったらもっと口を開けろよ
毛虫にもいろんな顔がある
辺境を拡大できます
何の嬉しさもない
虫が鳴いているな
アケルダマ
フグの背と腹
変身する勢いを保つ

 

 

 

 

 

注釈
アケルダマのダマはアダムのアーダマーだから土,アケルは血、吊った枝が折れて岩に落ちて裂けた

 

 

 

#poetry #rock musician