ナマコの胎児 *

 

さとう三千魚

 
 


台所に

佇つ

コーヒーのお湯が沸くまで佇つ

佇ち
尽す

モコが
見ていた

ソファーに寝そべったままモコは
見ていた

歯のいたいナイチンゲールのように **

そう
サティは楽譜に指示していたそうだ

ラジオ体操の曲みたいに軽快になろうとした
こともある

台所に
佇つ

庭の金木犀の木立の中で

雀たち
鳴いている

きみは
いない

ヒトがいない

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”ひからびた胎児” より
** Wikipedia「ナマコの胎児」注釈より引用しました

 

 

 

#poetry #no poetry,no life