尾仲浩二
母を病院に連れて行くために実家に戻っている。
母は同じ話を繰り返す。
幾度も財布の中身を数える。
家の中は大量のモノが溢れている。
ふたつの冷蔵庫はぎっしりと詰まっている。
この原稿を書くからとループする話を止めて二階へ上がった。
今にも降りだしそうな空を窓から眺めている。
2022年11月14日 千葉県君津にて
女が
台所で
洗い物をしている
水の音が
聴こえる
金木犀の木立の中で
今朝も
雀たち
鳴いていた
朝の光の中でナメクジが金色に光るのを見たことがある
柄眼類なのだろう
体の端から
触覚の眼を伸ばしていた
伸びる触覚の眼がない者が
無柄眼類というのだろうか
黒く大きな瞳をしていた
黒く大きな瞳をしていた
朝
きみは
黒い瞳で空を見ていた
* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”ひからびた胎児” より
#poetry #no poetry,no life