michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

塩釉の砥部

 

工藤冬里

 
 

 

父の遺品まで全部焼いてしまった後しょうがなく炭を買い足しに行った帰りマスクせずにローソンに入ってカツ丼みたいなやつと和歌山ラーメンというのを買って車で食べた
恭子さんが聞いたら卒倒しそうな最低の土方の食事である
温度が上がらないので他のことはどうでもよかった
軈て煙突がぬけて白い火が吹き上がった

 

 

 

#poetry #rock musician

遠心

 

原田淳子

 
 

 

春からの夜の散歩は続いていて
砂の城を歩く
塩の滑り台
眠りかけた蔦に足を絡める
ここから先はゆけなくて.

果実の囁き、香りがつま先で回転する
動けぬのなら遠近もない
ただ深さだけだ
力は何処へゆくの.

重ねられてゆく葉の深さが
永遠を指している

鉛の闇は絶対零度
小学校の休み時間、
教室で削っていた鉛筆芯の温度
屑籠は夜のようにあたたかった

深みのなかで
望みを濾過して
熱を発する

遠心の火

百年の炎立つ

 

 

 

I was hard up for something to say.
私は言うことがなくて困った。 *

 

さとう三千魚

 
 

it’s morning

night
becomes morning

becomes morning

outside the window
the west mountain

floating in the light blue sky

the sparrows
are singing

awake in the middle of the night

I wrote about the Buddha statue in Enku in a letter

letter
send to you

the west mountain is floating in the blue sky

I was hard up for something to say *

 
 

朝になった

夜は
朝になる

朝に
なる

窓の外の
西の山

薄い青空に浮かんでいる

雀たち
鳴いている

夜中に
目覚めて

円空の仏像のことを手紙に書いた

手紙を
きみに送る

青空に西の山が浮かんでいる

私は言うことがなくて困った *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

熱力学の第二法則

 

工藤冬里

 
 

二番町の焼けたくるきちのことを書こうと思ったけれども
まだ騙す人が沢山立っている戦後で
柳の下にずらりと並んだ屋台の
砂糖でくっきりさせた敗戦の甘味が
棚引いて
棚引いて
無いはずの時間が
曖昧な近い過去の
熱量の落差ゆえの現在となって
かめそばの上で削節が踊る
抗争の北京町
組員皆殺しの夢を見ながら
湯割りで調節する熱量

 

 

 

#poetry #rock musician

Turn off the radio.
ラジオを消しなさい。 *

 

さとう三千魚

 
 

everyone
left

became a white bone

grandmother too

father too
mother too

brother-in-law too
brother too

Nakamura-san too
Watanabe-san also

that
girl too

everyone
everyone

left

I’m carrying a wide sky now
I’m holding a wide sea now

blue rock thrush
looking for

now

Turn off the radio *

 
 

みんな
去っていった

白い骨になった

祖母も

父も
母も

義兄も
兄も

ナカムラさんも
ワタナベさんも

あの
女のこも

みんな
みんな

去っていった

いまはひろい空を背負っている
いまはひろい海を抱いている

磯ヒヨドリ
探している

いまは

ラジオを消しなさい *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

intervened

 

工藤冬里

 
 

新しいローソンがトラックを五台停めて浮かび上がっている
ラジオからは魔王が流れています
攻撃にさらされている
シューベルトのように

わたしは失敗している
動画をスローのスクリューにすると
勝手に明かりが点い たりする

やばい
やばい
やばい

父が音を立てて見回る
ランドリーはばかでかい

顔を
消去してゆく
センターラインを超え
身動きを取れなくしてゆく
目玉
携帯がびーびー震える

僕はあの温泉が嫌いだ
菌がいっぱいで

ファーター!
ファーター!
魔王が見える!

それはおまえに隙があるからだよ
たかのこの湯はちんころの湯だよ
黄信号が点滅する吹雪の道で
音を立てて見回る

くめの湯に向かうよ
BOSSの自販機があるから
地球だと分かるよ

 

 

 

#poetry #rock musician

受話器より 雁の鳴き聞く ビルの窓

 

一条美由紀

 
 


踏みしめればガシャガシャと
音がする気持ちを隠し、
今日もなんとなくやり過ごす。

 


足元は霞空
柔らかい繭はポコポコと生まれてくる
わたしは多分そのうちのどれかに入ってる
行こうか、
行こう

 


遠くに住む母との電話
ご飯は食べた?
薬は飲んだ?
毎日同じ会話を繰り返す。
認知症の母にいつもと違う質問すると、
意味がわからなくなって、あ、誰か来たと嘘をつく。
母の世界は徐々に小さく硬くなっている。
小さくなる世界は、輝きを内に秘めて
いつか放たれるのだろうか。