一条美由紀

嘘は快感となり、舌の上を転がっていく
腐敗した祖父は甘い香りを放つ
段ボール製のベッドはいつも私に優しい

お互いの痛みと暖かさを手を触れた途端に分かり合えたらいい
全て自分のものにならなくても、欲しい時には
いつでも持ってる人から貸してもらえる
死は怖いことではなく、また生まれてくることができる
なぜ神様はそんなふうに人間を作らなかったのかな。
ま、
そんな世界に人間は居たくないのよね。
recently
without going out
in the living room
playing with moco
reading a book on the sofa
I’m doing
the woman
she was there this week
she says she will go to work next week
also
I will live with moco
to a distant friend
I’m going to write a letter
・
There is a post office close by *
ここのところ
外に出ることも
なく
居間で
モコと遊んだり
ソファーで本を読んだり
してる
女は
今週いてくれたが
来週は仕事を行くといっている
また
モコと
ふたり暮らしになる
遠い友人に
手紙を書こうかな
・
すぐ近くに郵便局がある *
* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
#poetry #no poetry,no life
起伏の中に嵌め込まれた白の像が輝き
風景は初期の油絵のように塗られている
詣でる人らの中のペパーミントのジャンパーが
ザクロの川を渡る
机が鋭角に描かれる
机にナッツの袋が重たい
結婚式のようなネクタイをして
ひたすら待つ
カーテンは重力に従って時間のように垂れているが
過去形の夫の癌は治らない
根こそぎ解決するえらい人たちはなぜセーラー服のようなマントを着ているのだろう
一兆円を超える金銀銅が寄付されたが
鰓はそのまま
今まで食べたサーモンたちの下顎のことを考える
頭が痛い
目を閉じるとフラフープが見える
半泥子の「あけぼの」のようだ
燃える黒い心臓
凍てつくあたたかい夜明け前だ
#poetry #rock musician
“woman talks too much”
the remarks of the uncle of the construction worker in the neighborhood have become a hot topic.
it must have been an honest opinion to the uncle
it didn’t work in the world
Apollo’s moon landing
Tokyo Olympics
EXPO ’70 too
Bubble too
there would have been people in this country who lived independently
they would have lived in the land
after the tsunami
a lot of small boats arrived in the cove
there was a cry there
we can’t see the radioactivity
we can’t see the virus
・
Preparations are already under way for the Olympic Games *
“女は喋りすぎる”
近所の土建屋のおじさんの発言が
話題になっている
おじさんには
正直な意見だったのだろう
それが世界には通用しなかった
アポロの月面着陸も
東京オリンピックも
EXPO’70も
バブルも
無関係に生きた人たちがこの国にいただろう
彼らは
その土地で生きていただろう
津波の後
入江に小舟がたくさん流れ着いた
そこに叫びがあった
放射能は見えない
ウィルスは見えない
・
オリンピックの準備はすでに進行中だ *
* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
#poetry #no poetry,no life
五時五十分;黑夜猶豫徘徊
林中廢墟,雀鳥開始噪鳴。序
六時三十五分;微風微蜜蜂,嗡嗡嗡
弦外鋸來往來往,悲痛的木 一杯
七時十八分;一個祈禱。聚攏
無池的盡頭,反動城。這片水,淚光鯭難逃
鼓。很遠很山很海九時四十八分
我把蜜塗在門上,等你
光線來,輕若羽劃
精雕細刻。十一時五十九分 灰色。
一年之初并不重要。釘子釘上就立春。
・翻訳はこちらで
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判決前から有罪と決まっている生を
法廷に運ぶ
何でこんなことのために生きてきたのだろう
ハグをはぐらかして今生の別れ
デモからの古典的なしょっぴかれ方ではなく
仕組まれ押し入られ拘束されるという劇が刷り込まれるが
未来がないとしたらその時にはもう死んでいるのだ
時間を消すことで生きようとしている右翼らは
自分がすでに存在していないことにさえ気付かないまま
時間ではなく出来事に組み込まれていく
古典的時間に生きる左翼らは
時間がすでに存在していないことにさえ気づかぬまま
出来事にではなく存在しない未来へと立ち消えてゆく
法廷は存在しない
法廷とはすでに結審した何かだからだ
そして尚且つ生きねばならぬというテーゼだけが
体に与えられているのだ
逃げ道としての死が封じられ
犬猫を放っておけない類の情の時代となるだろう
身体は餌代で破綻したゴミ屋敷となるだろう
海よ法廷を飲み込めと彼らは叫ぶだろう
川よトラウマを流せと彼らは叫ぶだろう
山よ地下基地を覆えと彼らは叫ぶだろう
そして死刑が宣告されるのだ
#poetry #rock musician
小さな田舎町の雑貨店が静かに終わりを迎えた。
肌つやのいいおばさんが切り盛りしていた雑貨店。
文房具、生活用品、園芸用品、ちょっとした洋服、靴。
けっしてお洒落ではないけれど必需品はなんでもそろった。
自動ドアは常に開けっ放しになっていたけれど、中に入るとふわりといい香りがした
その町のメインストリートと言っては仰々しいのだが、必要最低限のものは確かにそこにはあった。
八百屋、郵便局、支所、農協、車屋、診療所、図書館、そして雑貨店。
みんなのんびり生きていた、ニコニコと優しかった。
道は細く車がすれちがうのがやっとなようなところ。
コンクリートはきちんと舗装されていなくてゴツゴツ。
自販機は錆びれていたし(中の飲料は大丈夫)、赤いはずのポストは色が剥げていた。
支所の職員(小学生時代の同級生のお父さん)は暇だったのかよく外で日向ぼっこしてたような。
透きとおった青い空の中をふわふわした雲がゆっくりと泳いでいた。
そんな町が小さい頃は当たり前にあったし、ずっと続くんだと疑いもしなかった。
「練り消し」という消しゴムが小学生の時ものすごく流行った。
もともとがやわらかい素材でできていて、もちろん鉛筆で書いた所なら消すことができる。
その消しカスを集めて丸めてもう一度使うのだ。
消した後のカスだから黒くて汚かったけれど、それがなぜかものすごく人気だったのだ。
もちろんわたしもお小遣いをもらってその雑貨屋に買いに行った。
オレンジ、グレープ、レモン………。
色んな香りがあってわくわくしながら選んだ。
しばらくは使わずに鼻をぎりぎりまで近づけて香りを楽しんでいた。
食べてしまいたいようなその練り消しは、消し具合はものすごく悪かったのだけども。
中学生に進級するにあたり制服の採寸をしてもらった。
自宅が2階にあるせいか、おばさんはいつもエプロンをしていた。
三日月のような目をした笑顔が素敵な小柄なおばさん。
「まあ、背が高くてすらっとして羨ましいわぁ」
そんな単純なお世辞のような言葉にわたしは浮かれていた。
初めて袖をとおした2本線の入った黒いセーラー服を着た自分は大人びて見えた。
全身鏡を持ってきてもらって上から下まで見るとなんだか恥ずかしかった。
手際よく必要なものを採寸してもらいあとは納品を待つだけとなった。
レジの金額を見たとき結構高いんだなぁと驚いた。
大切に着よう。
帰り際、あの練り消しが陳列されていた棚はロケット消しゴムとやらに変わっているのを発見した。
ロケット鉛筆の消しゴムバージョンらしく、一番上の部分がなくなったら下から押して次の消しゴムを使うらしい。
いくら探してもあの「練り消し」はどうしても見つけられなかった。
その1週間後、わたしはこの町の小学校を卒業した。
中学校は隣町だったためバス通学になった。
あの雑貨店にはそれ以来行くことはなくなった。
おばさんと会うこともなかった。
嬉しいことにそのおばさんは今でもとても元気にあの場所に住み続けていると聞いている。
雑貨店はなくなってしまったけれど、あの瞬間あの場所に存在していたという事実は変わらない。
それはわたしや友人の記憶の中にも刻まれているはずだ。
そしてこれからも忘れることはない。