海から帰ってきた

 

さとう三千魚

 
 

モコは
いないから

居間のソファーの
モコの

傍らにいる
ことももうない

仏間の
小机の

本や
資料を

二階にあげた
二階の机の上の積まれた本を下ろした

この半年
二階の部屋は使わなかった

ダンボールは畳んで
クルマのトランクに積んだ

ホームセンターのリサイクル置き場に出した
海を見にいった

フロントガラスの向こうに

半島はいた
貨物船は浮かんでいた

水平線が光っていた

海から帰って
ベッドに大の字に眠った

呻いてた

なぜ呻くのか
わからない

夢なのか
憶えていない

ベッドから起きると羽毛布団は体の形に凹んでいた
体の形の凹みを見ていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

モコ、ぼくの犬 **

 

さとう三千魚

 
 

今朝
木蓮の白い


咲いたよ

モコ
お母さんと植えたね

白木蓮の花だよ

木蓮の花は
モコのようだよ

ふんわりと
白く

ひらいたよ

 

・・・

 

** この詩は、
2024年2月28日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第2回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

愛犬のモコが、1月2日にあの世に旅立ち、モコを想い、この詩を書きました。

モコの死、パレスチナの人びとの死、ウクライナの人びとの死、われわれの死を、想い書きました。

また、2024年3月3日 15時〜18時に、静岡駅北口地下広場にて、「無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第22回としてスタンディングを行い、この詩と憲法前文などを拡声器を使って朗読しました。

以下、資料をご参照ください。

・・・

イスラエル軍の攻撃で3万人以上が殺害されたパレスチナ自治区ガザで、2月29日、支援物資を求めて集まった人々が発砲を受け100人以上が死亡したことが報道されました。
国連安全保障理事会は緊急会合を開き「深く懸念する」という声明に、理事国15カ国中、14カ国が賛成しましたが、米国が反対し、合意に至りませんでした。


ウクライナでもまだ戦争は続いています。

日本では、いま、憲法の基本原理である「国民主権主義」「基本的人権尊重主義」「平和主義」が脅かされ、軍事費が増強され、国内で製造された兵器が輸出され戦争に加担されようとしています。

戦争 やめれ!
すぐ やめれ!
殺すな。


・・・

日本国憲法 前文 読みます。


日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

・・・

先の戦争の過酷な体験を基盤とした日本国憲法の基本原理である「国民主権主義」「基本的人権尊重主義」「平和主義」を、わたしたちは忘れてはならない。

戦争 やめれ!
すぐ やめれ!
殺すな。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

海を見に行く

 

さとう三千魚

 
 

昼前に
銀行の

キャッシュコーナーで
現金を下ろした

それから
帰って

いくつか
浜風文庫を更新していた

辻さんの赤ちゃんの詩と
広瀬さんのブロック塀の写真を

公開した

午後に
海を

見に行く
クルマで行く

椅子を
すこし倒して

海を見てた
ポットのコーヒーを飲んだ

西の山がいた
灰色の空がいた

この空に
ドローンはいない

砲弾も
機銃掃射も

ない

ミサイルも飛んでこない

鳩たちが
いた

海は
昨日の雨で濁っていた

波立って
いた

午後の海を見て帰ってきた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

雨を受ける

 

さとう三千魚

 
 

墓参に
行った

昨日
女と

行った

義母の命日だった
犬のモコの四十九日だった

雨が
降っていた

アスファルトが濡れていた

墓参の後
女と

蕎麦を食べて帰ってきた

庭には
白木蓮の花が咲いた

白い蕾と花は
空にひらいていた

雨を受けていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

海と空と雲をスケッチする

 

さとう三千魚

 
 

夕方に

コーヒーをポットに入れて
クルマで

海に出かけた

モコはいない
海がいた

空がいた
雲もいた

カモメがたくさん飛んでいたよ
風が吹いていたよ

クルマのバックドアを押し上げて
その下に

椅子を置いた
コーヒーを飲んだ

それから
0.35mmのシャープペンで

海と空と
雲を

スケッチする

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

10人称 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 66     mito さんへ

さとう三千魚

 
 

どこに
いるの

どこに
いったの

きみは
人称をなくした

時計まわりに
まわっていた

白い花
まわっていた

過ぎていった
まわっていた

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った66個めの詩です。

タイトル ”10人称”
好きな花 ”時計草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

冬の青い空 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 65     miyuki さんへ

さとう三千魚

 
 

音が
なかった

たいらな

雪原の
うえには

青い空がいた

青いね
青いね

春になったら
梅の花が

咲くよ

青空のしたに
梅の花は咲くよ

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った65個めの詩です。

タイトル ”冬の青い空”
好きな花 ”梅の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

出会い ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 64     ryou さんへ

さとう三千魚

 
 

はじめて
会えた

きみと
会えた

ぐらり
回転したわ

あなたが
わたしで

わたしがあなた
清々しい匂いを嗅ぐ

血が騒ぐ
血を繋ぐ

忘れない
あなたの歌

忘れないよ

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った64個めの詩です。

タイトル ”出会い”
好きな花 ”金木犀”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ひとと会う **

 

さとう三千魚

 
 

詩を
読みたいのか

詩を書きたいのか

詩に
会いたいのか

どう
なんだろう

猫のいる
本屋で

ひとと会っている

 

** この詩は、
2024年1月31日 水曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第1回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

手紙をポストに入れる

 

さとう三千魚

 
 

昨日

詩を
読んでいた

朝から

詩を
読んでいた

尾形亀之助を読んだ

鈴木志郎康さんと
清水哲男さん
松下育男さんを読んだ

亀之助は

“ガラスのよごれ” *
“二人は淋しい” *

と書いていた

“生きのびることが、” **
“生きのびることが、” **

と志郎康さんは
二度くりかえしていた

“暑いなあ” ***
と哲男さんは言っていた

“「助けてくれ」” ****
と育男さんは夢の中で二度叫んだ

どうなんだろう
わたしは夢の中で二度叫ぶだろうか

彼らは低い土地に佇っていた
詩を書いていた

きのうまで
“以無所得故” が *****

わからなかった

風が
吹いてきた

手紙をポストに入れる

 

* 尾形亀之助 詩集「美しい街」より引用しました
** 鈴木志郎康 詩「赤ちゃん」(浜風文庫掲載)より引用しました
  ・赤ちゃん
https://beachwind-lib.net/?p=21235
*** 清水哲男 詩集「換気扇の下の小さな椅子」より引用しました
**** 松下育男 詩集「コーヒーに砂糖は入れない」より引用しました
***** “以無所得故”は、般若心経の一節

 

 

 

#poetry #no poetry,no life