掴み得ぬこころの

 

ヒヨコブタ

 
 

ふとしたときに
なにかの合間に
かつて友からの便りにあった
おもはゆいということばを
思い出しては想像する
おもはゆいこころもちであった彼女は
いまどうしているだろう
はたして
わたしはおもはゆいということばの
彼女の意図するところを
きちんと掴めたのだろうか
おもはゆいはそんなふうにわたしのまわりを漂って
手をすり抜けるようにしているのに
ある日ぬんと表れる
おもはゆさとはこんな感じだろうか
いや違うだろう

何年経ってどんな人生になっていても
お互い関係や思いが変わらぬままというのは
憧れではあるものの
すれ違っていくのを感じるとき
それが重なるとき
彼女のことばは表れる

照れくさいほどに顔を会わせたくなるひとたちの
一人ひとりを思い浮かべては
ぼんやりとしてしまう
それらはわたしのなかにある記憶で
現実の彼女彼らではないのだろう
この世界は
思い浮かべるほど広くなりまた狭くもなる
思いこみの世界なのか
あまりに膨大で
深い海のように

 

 

 

a barren hill

 

工藤冬里

 
 

14 de abril
77
1月 david bowie low
2月 bryan ferry in your mind
television marquee moon
3月 iggy pop the idiot
8月 iggy pop lust for life
9月 richard hell blank generation
11月 throbbing gristle second annual report
10月 sex pistols never mind the bollocks
12月 suicide
https://youtu.be/QYYZDwDJK3s

15
最初の四分の一くらいに羊
https://www.mixcloud.com/radiocampusbruxelles/le-matin-du-jeudi-15-avril-2021/

17

18

1978年5月23日にs~ken がオープンする前にパンクは終わっていた。lapisはfrictionを止めていたしjeanは”海”で退潮していた。

genetは正月には羽織袴で父親と写真を撮るような坊だった。亡妻への周りからの弔辞ツイにgoth由来ではない古格が映り出されている。

19
決して悲しむことはないrev18:7と彼女は言い続けるポジティブ病のように

20

ロング・グッドバイsuite初めて聴いた。蠍座ではなく73年中之島とあるので寺山の死まで封印してたというわけではないと判る


22


早晨

ナワルニー水曜夜空の青を知らぬ右派
https://twitter.com/mediazzzona/status/1384923749275799556?s=21

目を開いたまま倒れ込む男

スリー・ビルボードのフランシス・マクドーマンドが車中泊映画ノマドランドで一人だけ役者を張っている。学年一つ上でリアルだが、前作ほどには現実のとんでもなさを超えられていない。涙よりましな寡黙さが、佇み暮れるだけで、芯の強さにまではなっていかないのだ。

見るまえに跳べ

危険の感覚が消え失せてはならない
たとえここからはどんなに緩やかに見えようと
君の行く道は短く険しいのだ
見たいなら見るがいい、でも君は跳ばなくてはいけない
〜 W.H.オーデン

a barren hill
悪いやつでも格言を語ることができる
動物だけが嘘をつかない
パワーワードを使おう
僧侶の彫った隧道を潜り
熊笹を探した
いや、キーワードを使おう
起きたら死んでいた
未摂種なので外食できません

とうとうたらり たらりら たらりあがりららりどう  「雛鶴三番叟」

三番叟
https://youtu.be/4HJtRkY3pQA

https://youtu.be/8jJCjs2-QKc

核心など、ありはしない。 フーコー 劇場としての哲学
反復はどうなるかといえば、もはや同一的なるものの陰鬱なけばだちではなく、転移された差異となるかもしれぬ。 蓮実訳
それは一つだけ多すぎる朝という生殖性を生きることである

三番叟
https://youtu.be/8unXZCKAB5U

ならば千プラは所有の側からではなく捨てる事、覚悟の戦いから見た方がいいのか。
笙野頼子「おはよう、水晶一おやすみ、水晶」

野良ビトたちの燃え上がる肖像 木村友祐 2016 新潮社

三番があると思っていたが二番で終わった
新しい政府と社会
病気に罹らない
内側の綺麗さ
車を清掃することは新しい地できちんと生きたいという願い
それだけで約束された新しい地になるわけではありません
清められた地ではない
ソドムは自然がとても美しい土地だった
笹は光だった

Robert Erickson: Pacific Sirens (1969)
https://youtu.be/omuA2ghnrIY

25

ромашова ?
бля, когда я в детстве мечтала, чтобы у меня была интересная жизнь, я немного другое имела ввиду


ромашова ?
яяяяяяяя https://
calvin日和と言われて笑い泣き
https://youtu.be/oljL1zbGkTY

https://www.mixcloud.com/Tak_Tent_Radio/schreek/

 

4月26日の詩
タイトル:a barren hill

a barren hill

塩の契約の拘束力
目を開いたまま倒れ込む男

悪いやつでも格言を語ることができる
動物だけが嘘をつかない
パワーワードを使おう
僧侶の彫った隧道を潜り
熊笹を探した
いや、キーワードを使おう
起きたら死んでいた
未摂種なので外食できません

三番があると思っていたが二番で終わった
新しい政府と社会
病気に罹らない
内側の綺麗さ
車を清掃することは新しい地できちんと生きたいという願い
それだけで約束された新しい地になるわけではありません
清められた地ではない
ソドムは自然がとても美しい土地だった
笹は光だった

 

 

 

#poetry #rock musician

河口まで

 

さとう三千魚

 
 

日曜日
晴れていた


自転車で走った

河口まで
風につつまれて走って

いった

海は
光ってた

サーファーたちが河口に浮かんでいた

ノラたちが
草むらに寝そべっていた

もう
いいかな

もう
いいのかな

ここに

空はあり
海は

うねっていた

昼前
二階のベランダで洗濯物を干した

終わって
寝室に入ると

モコが
いた

いつも一階のソファーにいるモコが
もう階段を上る力のないモコが

二階の
寝室の床にいた

老いた
モコが

こちらを見ていた

モコ
モコ

なにを
言いにきたの

きみなにを失ってはなにを
抱いているの

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

スマホ炎上・譚/
4月になれば、或る奴らは・・・ *

 

今井義行

 
 

富士通 arrows M04 は わたしの たいせつな 友だちだった・・・よ
それなのに わたしは 絨毯に おいて あった 友だちを
まちがえて ちから いっぱい 踏んで しまった・・・よ
友だちは 一瞬にして ほのおを 大きく 噴きあげて
爆発をして しまった・・・よ
友だちは こなごなに なって 散って しまった・・・よ
わたしは 濡れた タオルで どうにか ほのおを 消した けれど
SIMカードは 焼け焦げて 死にたえて しまった・・・よ
日々の なかで 新聞も TVもみない わたしは ベッドで Yahooニュースや Facebookなどの ネットを 何時間も ながめ つづけて 
いるのが 好き なんだ・・・よ
Facebookは 数多くある コミニケーションアプリの ひとつで わたしに とっては 
富士通 arrows M04と 同じくらい たいせつな 友だち なんだ・・・よ
かつて わたしが キャプションを つけて 画像を アップして いた頃 
それに 反応した 見知らぬ
誰かからも コメントを 入れて もらったり して いたんだ・・・よ 
その逆の ことも あって わたしは それを とても 愉しんで いたんだ・・・よ 
いまでは 閲覧が 主になって さまざまな 情報を 何時間も 何時間も 愉しむように なって いるんだ・・・よ 
「人びとの くらしは さまざま だなあ なんて」 おもいながら・・・
或る日 わたしは なにかが からだの なかに 在る ような 
気がして いたんだ・・・よ
わたしは その なにかが どこから きたのかなど 知りは しなかったんだ・・・よ
まったく・・・知りは しなかったんだ・・・よ
 

空0わたくしは・・・その なにか の ことを 知って おります・・・
 
 
空白空4月になれば、或る奴らは・・・
空白空まるい テーブルを かこみあって
空白空分厚い ポークソテーを おいしく 食べる ことでしょう
空白空フォークと ナイフで 切りわけた
空白空分厚い ポークソテーの いのちは 濃い脂だから
空白空奴らは くちびるの まわりに たくさんの 濃い脂を
空白空かがやかせては お互いの くちびるの まわりを 存分に
空白空ながめあう ことに なるでしょう・・・
 
 
わたしは 写真を 撮らないし 曲を ダウンロードする ことも ないから
えきまえの Y! Mobile で
もっとも スペックの ひくい あたらしい
友だちに なって くれそうな 端末を かったんだ・・・よ
そして ふるい へやに もどって わたしが
はじめに した ことは よく切れる 4枚刃の かみそりで
無精ひげを 剃る ことだった・・・よ
すると くちびる から まっかな 液が でてきて
はちみつヨーグルトが 瞬く間に あかく そまって しまった・・・よ
 
 
空白空4月になれば、或る奴らは・・・
空白空ふるくからある 下町の 銭湯へ いく ことに なる でしょう
空白空そうして 奴らは
空白空背中から 足先まで 入墨をしている ひとが
空白空ひろい ゆかに 立って いる ことに 気づく でしょう
空白空そうして 奴らは そのひとの
空白空和彫りの 美しい 華々に いくたびも さわらせて もらって
空白空はげしく 高揚をする ことでしょう
空白空やがて 奴らの ひとりは 和彫りの 華々の いとしさに みとれながら
空白空「50万円で 拳銃を 売ってください」と
空白空たのんで みる こと でしょう
空白空けれども 和彫りの 華々の 艶やかな ひとは
空白空けっして なにも 答えない でしょう
空白空( ああ 世の中で いちばん いやな ものを なくした かったのに・・・ )

                   
箱を あけて わたしが であう ことに なった 友だちは・・・
外国 うまれで その からだは とても あおくて うすい 奴だった・・・よ
たのむから・・・ もう 炎上 しないで おくれ・・・よ
携帯番号は 変わったけれど わたしには ほとんど 電話がくることが なかった な
わたしは さっそく Facebookを インストールして ひらいて みた・・・よ
・・・・・・・・・・・・・・・
わたしの 大きな 顔写真がないのが 正しいアカウントで 
大きな 顔写真があるのが どこかの 欧米人に 乗っ取られた 
アカウントだった・・・よ
・・・・・・・・・・・・・・・
画面には 顔写真がない ほうの 正しいアカウントが でた・・・よ
 
 
空白空4月になれば、或る奴らは・・・ 
空白空まだ 法制化 されていない 同性婚を していく ことに なる でしょう
空白空けれど 奴らは おんなのなかに おとこがすみつき
空白空おとこのなかに おんながすみついて いる ことを 知っているから
空白空・・・・・・・・・・・・・・・
空白空奴らは 真っ直ぐに 離婚を して しまう こと でしょう
空白空なぜならば 奴らの 醍醐味は
空白空・・・・・・・・・・・・・・・
空白空仄暗い へやで 顔も見えず 名まえも 知らない 処で
空白空特定の 相手など もとめあわずに
空白空まじわりあう ことだと 知って いるから なのです・・・
 
 
その晩から 翌朝まで わたしは つくづく スマホを いじり倒していた・・・よ
けれど わたしが あたらしい スマホの Facebookに ある
「その気持ち シェアしよう」 という スペースに 
「昨日は はちみつヨーグルトを おいしく 食べました けれど 無精ひげを 
剃った ときに くちびるを
傷つけて ヨーグルトが すこし 赤く そまって しまったんです・・・」という 
できごとを アップしたとき 見知らぬ 誰かが すぐに いいねを 
つけて くれて いた・・・よ わたしは 
そのひとの タイムラインに 跳んでみた・・・よ 
すると「今日は とっても 新鮮な さかなが とれて 早速
さばいて みたら さかなは まだ 活きていて 内臓が まだ ぴくぴく 
動いて いるんです・・・」という 動画が アップされていた・・・よ 
わたしは その動画に 「リアルな 画像ですね!」という コメントを 
入れたんだ・・・よ そのあとに 自分の アカウントに もどって 
「今日は とても 楽しい 出会いが ありました!!」と 入力したら 
その 文章が 大きな顔が ある方の 乗っ取られた アカウントに 
移動して しまって いたんだ・・・よ そのような ネット上に あげられた お互いの できごとが・・・ひとと ひととが 繋がりあえる ことが
Facebookの 魅力だった というのに・・・Facebookの 不具合で
その 愉しみが ほとんど 失われて しまったという ことは 
本当に さびしい 出来事 なんだ・・なあ・・・

空白空4月になれば、或る奴らは・・・
空白空早朝に ひびくはずの めざましどけいを セットする こと でしょう
空白空けれど 早朝に なって いくら まっても その とけいが ひびかないので
空白空奴らは その とけいが とけいの すがたをした なんらかの
空白空機械で ある ことに 気づく こと でしょう
空白空いきどおった 奴らは 絨毯の うえで その なんらかの 機械を
空白空あちらこちらから つよい ちからで 踏みつぶす ことに なる でしょう
空白空機械は 一瞬にして 大きく ほのおを 噴きあげる ことに なるでしょう
空白空しかし 奴らは 噴きあがる ほのおを 鎮める ことなど 決して する 
空白空ことは ないでしょう 
空白空奴らの だれもが その機械を 卑下して いるからです
 
 
或る日のこと・・・訪問看護師さんが 訪ねてきてくれた・・・よ
鹿児島出身の りすのような 顔をした
若くて 可愛い おんなの娘 だった・・・よ
彼女とは すこしずつ 親しみが うまれあって いるような 気が して いたよ・・・
わたしと 彼女は しばらく
向かいあって いたのだ けれど
そのあと わたしは どうにも ならない
気もちに なって しまって 彼女を 抱きよせて しまった・・・よ
「あなたは わたしに 娘が いたならば その 娘よりも 
もっと 若い ひとだ・・・よ」
「はい わかって います・・・」
その できごとは あたたかい 体温に ふれつづけている・・・
ネットに あげられた 現実を はるかに 越えている・・・ 
「現実」だったんだ・・・よ 
それから 10分ほど そのままで いて 
わたしは 玄関で 彼女に 「お気をつけて」と 言ったんだ・・・よ

やがて わたしは ひとつの 気もちに たどりついたんだ・・・よ

「そうだよ な・・・たかが Facebookでは ないか・・・?」

「こんな ことで 死んで しまう わけでは あるまいし・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わたしは ネットなどに ふりまわされないで これから くらしていく
ことに すっかり 決めたんだ・・・よ 

しばらく してから
わたしは もの静かな 雨の ふっている 外へと 出かけて いったんだ・・・よ
 
 
空白空4月になれば、或る奴らは・・・
空白空えきまえの らあめん屋に いく ことに なるでしょう
空白空その らあめん屋には ばつぐんの
空白空挽き肉の らあめんが あって
空白空おおむねの ひとは その 挽き肉の らあめんを たのむのです
空白空奴らは カウンターに すわって
空白空その うまいという 平うち麵を たのむ ことに なるでしょう
空白空やがて 奴らは なにも いわずに 湯気のたつ
空白空いずれ はこばれて くるだろう 挽き肉の らあめんを 
空白空いかにも たのしそうに 待つ ことに なるでしょう・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その ことは とても 素晴らしい できごとに なる こと でしょう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

空0わたくしは・・・ その後の 奴ら の ゆくえの ことは 知って おりません・・・
 

・・・・・・・・・・・・・・・

 
空0わたくしは・・・ その後の 奴ら の ゆくえの ことは 知って いないのです・・・
 
 

 

* 詩のタイトルの1部は「ポール・サイモン・ソングブック」を、参考にしました。

 

 

 

あるときの音

 

川島 誠

 
 

ぼく
ぼくらは

一番遠くを見ている

一瞬の音の立ち上がりとノイズ

身体が軋む ねじれる
真鍮の錆
血のようなほこりと唾液のにおい

全体が声のようでざわざわ

眩しくも消えていった

なにもそこにはなかったのかもしれない

光と同じ色をした 三角形

きっと
ぼくと

ぼくら

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その53

 

佐々木 眞

 
 

 

ひとめぼれ、好きになることでしょ?
そうだよ。

お父さん、立派の英語は?
グレートかな。
立派、立派、立派。

横浜線は「特急かいじ」とかでしょう。
そうなんだ。

遅れてるみたい、ってなに?
遅れているらしい、よ。

コウ君、ラーメン食べられるの?
食べられますお。
ほんと?
大丈夫ですお。

お母さん、今日はお赤飯とトマトシチューにしてください。
分かりましたあ。

かわかわのコウちゃん!
ぼく、コウ君ですお。

警察の察は、ウカンムリにハツでしょ?
なになに、うーんと、そうだね。

毎度、いつも、ね?
そうだね。

キッチンカーって、なに?
台所がついた車よ。

勘弁して、って、許してあげること?
そうだね。

コウ君、足痛いの?
大丈夫ですお。
お薬つけますか?
つけますお。

感じるは、思うことでしょう?
そうだね。

コウ君、今日の予定は?
ぼく西友に行きますお。

確定申告って、なに?
税金の話よ。

ルルルル。はいお父さんですよ。
お母さん出してください。
お父さんではダメ?
ダメですお。お母さん出してください。
分かったよ。

今日おばあちゃんち寄ってえ、図書館行ってえ、東急でパンとおべんとう買いますお。
分かりましたあ。

コウ君、リコちゃんの名字はなんていうの?
フクモトだお。大学生だお。
そうなんだ。

ぼく連佛さん、石原さとみ、福本莉子両方好きだお。
そうなんだ。

お母さん、ホネどこ?
ここ、ここも、ここも、みなホネよ。

ホネ、痛いよね?
ガンになると痛いのよ。
ホネホネホネホネ

お父さん、連佛さんが「アホ笑いするな」と言ったら?
「もうアホ笑いしません」と言うんだよ。
アホ笑い、アホ笑い、アホ笑い。

お父さん、竹中直人の番組、録画してください。
分かりましたあ。

お父さん、タケナカナオトのビデオ、見たいですお。
分かりました。いつ見ますか?
いま見たいですお。
分かりましたあ。

お母さん、わずかって、なに?
ちょっとだけのことよ。

就職活動って、なに?
会社に入るための運動だよ。

「こそあど言葉」書くよ、ファミリーナで。
書いてね。

おや、コウ君一人で帰ってきたの?
そうですお。
お母さんは?
おばあちゃんチにいますお、ケンちゃんと。
そうなんだ。

今日おばあちゃんち行ってえ、図書館行ってえ、JRの回数券買ってえ、東急でパンとお弁当買いますお。
分かりましたあ。

お母さん、くじけるって、なに?
おちこむことよ。

コウ君、乾燥してるときに、また洗濯物入れちゃだめよ。
分かりましたあ。

お母さん、大好きですお。
コウ君、またなんかやったんでしょう?なにしたの?
分かりませんお。

 

 

 

晴れていた

 

さとう三千魚

 
 

義母の
月命日で

今朝は

晴れていた

朝早く
車で

女と墓参にいった

墓前に

花を活け
線香を添える

ほのかに紫の香りがたちあがる

墓の写真をスマホで撮り
女は

いくえちゃんに
送る

マレーシアにいるいとこの
いくえちゃんに

写真
送る

帰りは
川沿いを歩いて帰った

ひとり
川沿いを

帰ってきた

女は仕事に行った

今朝
西の山を見なかった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

エメラルド

 

原田淳子

 
 

 

四月は風ばかり吹いて、エメラルド

猫よ、
きみの眼の色の季節
ギリシャの海
波の結晶

猫よ、
きみはわたしのこどもでもなく
わたしの友人でもなく
恋人でもない

夢のおわりの朝
緑の眼でわたしを目撃する

幾億幾千もの虐殺を逃れて
きみの生はこの部屋に転がる
きみの緑がわたしの眼を舐める

家族/共同体/国家を逃れて
嘶き、共闘しよう

剥奪されない、生でいよう
緑の獣でいよう

四月の風が緑を噴きあげる

狂わされた季節に花たちが咲き急ぐ
白、黄、青、、
待って、と、つぶやく
まだ靴を履いていない
駆けあがる呼吸に
わたしの空洞のオルガンが軋む
和音未満の点線

貧しきものにも等しく時間は降る
愛と似て
時間は歪められない

緑の氾濫に、いのち萌ゆ

 

 

 

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第89回

 

佐々木 眞

 
 

 

西暦2020年師走蝶人酔生夢死幾百夜

 

高卒で事務職に採用された彼女だったが、みるみる出世して、2年後には代表取締役社長になってしまった。12/1

文化へ行ったらヒサダさんが出てきて、「あなたたちどうしてるの」と聞くので、「いやあ相変わらずですよ」と答えると、「もっとビシッとやらなきゃだめじゃないの」と叱られた。12/2

敵に包囲された城内にあって、デビット王子は、敵が放つ燃える火球をうまくキャッチしなければ、ただちに爆発して甚大な被害が齎されるので、苦労が絶えないのである。12/3

彼女は。手もとの金を全部まとめて、床下に掘った穴に埋めた。12/4

倒産してまもなく、この世から消え去る会社では、急激に社員が姿を消し、残るは我ら数名だけとなったが、たった1台のパソコンには、全社員の別れの言葉が記されていた。12/5

中国軍船が群れる国境周辺の海域に、丸木舟に乗ってやって来た私は、海にプカプカ浮いて日光浴しながら、とうとう新旧約聖書を全部読んでしまった。12/6

宣伝課と同期入社の忘年会が、同月同日同時間にバッティングしたので、その両方を行ったり来たりしているうちに、終わってしまったので、電車に乗ると、右側には亡くなった今井さんが、反対側にはヨシタケさんが座っているので、もしかするとヨシタケさんもこの世の人ではないのかもしれない、と思った。12/7

全世界を席巻した新型コロナウイルスのせいで、人類の生き残りはたった2人の男女になったのだが、彼らは協力して子供を作ろうとはせず、共に逃れついた北極点で、殺し合いを始めようとしていた。12/8

暫く前から、夜中に小便に起きなくても済む薬を飲んでいるせいか、夢はいつもと同じように激しく見ているにもかかわらず、残念ながら、起きてそれを枕元でメモできなかった。
従って、これは夢日記ではない。12/9

これまでの海戦では、一度も負けたことがない本艦であるが、念のために、このたびの強敵に備えて、鉄人28号を呼び寄せることにした。12/10

誰の影響だか、彼女は、有金を全部賭けるのを止めてから、その女性性の破壊が、いくぶん収まったようなので、周囲の人はほっと一息入れた。12/11

私は、その難儀な試合を上手に操作して、10対9で勝利したのよ。12/12

私は寅さんの監視役を仰せつかったのだが、神出鬼没で、煮ても焼いても喰えないこの風来坊を、抑えることなぞ、出来るわけがなかった。12/13

死にゆく王子は、その前に某国の王女に氷上で長い接吻をして結婚式を挙げ、初夜の睦言をたっぷり楽しんでから、やすらかに死の床に就いた。12/14

3人で決闘することになり、当日の約束の時間に集まったのだが、どういう風に決闘をやるかについての話し合いの結論が出なかったので、「じゃあまたね」と言うて別れた。12/15

パナの展示会で、各ブースごとにお土産を呉れたのだが、それが物凄い荷物になってしまい、とうとう会場からタクシーに乗る破目に陥った。12/16

吉原でさっぱり売れない女たちを集めて、その性豪がメンテを施すと、たちまち男どもの指名が殺到するのだった。12/17

恥ずかしいので、今まで一度もやったことのない、詩の朗読というやつをやってみたが、幸いなことに、誰も聞いていなかったので、大助かりだった。12/18

共同権利者である彼女に、その物件の説明をしている間に、彼女が息を引き取ったので、私が、全権を引き継ぐことになってしまった。12/19

もうその頃には、全国民がコロナに感染していたので、いくらワクチンを飲んでも、後の祭りでした。12/20

イルカに変身した私は、イタリアで観光客を、つま先泳ぎをしながら、案内しているところだ。12/21

ジャスミン革命が大爆発したのは、今から3年前のこと.だったが、たった3年でも、その時代の空気感は、もう2度と戻ってこないことを、嫌でも思わないわけにはいかなかった。12/22

私は、新しい手を次々に作っては、そいつでもって、聖徳太子みたく、百千のハンコを、ビシバシ押してやったんだ。12/23

「あの性悪のセクスイー女にだけは近づくな」と先輩が忠告してくれたにもかかわらず、おらっちは、うかうかと手を出して、ズルズルと深みに嵌っていったのよ。12/24

仕事を終えて、新幹線の1号車の指定席に座っていると、浜名湖付近で、突然巨大ウナギどもが乗り込んできて、「ねえ、一緒に泳ごうよ」と、誘って来るのだった。12/25

私はウチの「サイカンキョウ鉄工所」を活用して、カモラマンのカモちゃんに、いい写真を撮らせようと企んだが、やっぱ無理だったようだ。12/26

この病棟に入ると、ガンで死にゆく人たちの、寛大な精神に打たれるのであった。12/27

バク高乏人そう会チャイ好きしきに私ビューキシャンクル自信ない 12/28

私は、頭の中のイメージ通りにセンター前にヒットを打ったが、一塁にゆうゆうセーフで到達するはずが、焦って左足から滑り込んだために、アウトになってしまった。12/29

海から奇妙なものが出現した、と聞いて、コウジュ君が、「それはきっとスタヴローギンに違いない」と言うたので、わいらあ会社の仕事なんか全部すっぽかして、電車に乗って出かけたが、これって出張手当が出るんかいな。12/30

私はもてん出社 きねんきかく をの工場と本を毎日 日本人かてえれく 12//31

 
 

西暦2021年睦月蝶人酔生夢死幾百夜

 

山紫水明の田舎町を訪ねたのだが、あまりにも山紫水明すぎたので、その名前を忘れてしまった。1/1

ジュースが配給になったので各戸毎に配分しなければならないのだが、それを計ったり、エレベーターに詰め込んで配達するのが大変だ。1/2

クマと遊び始めたのだが、そこいらにウンコはするは、やたら吼えるはで、ひどく大変だ。急いでトリセツを引っ張り出したが、役立たずで、後悔先に立たずだった。1/3

JRの危険団では、反鉄道団体を規制するために、JRシンパをにわかに囲い込んでいた。1/4

「おらっち、ちょっくら横須賀へ寄ってくらあ」、とそいつがいうので、止めたのだが、案の定溝板通りの米軍人用のバアで新型コロナに感染して、ほえずらをかいた。1/4

私らは、会社の跡地をたびたび訪れては、再起を誓ったが、それは結局果たされぬ約束、見果てぬ夢と終わってしまった。1/5

ガードマンの私が、一晩中観察したところによれば、非常事態宣言をしたマンションの窓の中に、1美女、2幼児、3母親、4盗人が次々に忍び込んでいった。1/6

誰かが、おらっちをはじめとする33匹の蟹の目の前に、うまそうなパスタを落としてくれたが、大きすぎて食べられなかった。1/7

夜の12時ちょうどに、コンサートの最後の曲が終わるはずだったが、失敗したので、指揮者は、今度は1時終演をめざしてまた挑戦したが、うまくいかないので、コンサートは延々と続いた。1/8

解体していく人物像を阻止しようと、一世風靡した彼の名文句を画面に向かって投げつけたが、画像は、どんどん溶解していくのだ。1/9

もう人世の最後の周回期に突入したので、幼少期から現在に至るまでの印象的な光景を呼び出して、ブルーレイに焼き付けておこうとしているんだ。1/10

国鉄の終電時間が早まった代わりに、全国の全線の普通列車が無料になったので、暇人はみな利用している。1/11

いつまで経っても、その場に転がっている死体を、誰も処理しないので、しかたなく私が地面に穴を掘って、商人2名、天使1名の死体を葬った。1/12

さんざん罪を犯したのは事実だが、同じくらい罪を犯した人間を見つけたら、2人とも免罪されると聞いたので、罪人たちの情報交換が盛んに行われているようだ。1/13

ここからだと、世界の秘密を解明する手掛かりとなる、岩石の割れ目が、よく見える。1/14

西海岸に住んでいた時は、いつもジョン・ウエイン空港を利用していたのだが、コロナ禍で使用中止になって、名前もアラモ空港に変わったそうだが、悲しいことだ。1/15

電通が石坂浩二を売り込んでいるのに対抗して、おらっちは、新しき村の家ごとに入り込んで、失われた一家団欒を回復していったのよ。1/16

100万円の報奨金が出ると聞いたので、イの一番にもらおうと、わいらあ国会議事堂に押し掛けた。1/17

政とにたかう故じゃの声明へのしょめい 1/18

我が国の6チャンと5チャンネルに、4Dとか8Dなんてめじゃない物凄い解像度を誇る映像を、暇な宇宙人が送って寄越したので、技師たちは大慌てだ。1/19

ともかく、どんな学校でもいいと思って、10個以上も受験したところ、なぜだか全部受かってしまったので、どれにしようかと、いつまでも迷っているわたし。1/20

アウターのトレンドが完全に行き詰ったので、今年のパリコレの出品は、マスクとパンツだけになったが、その中でいちばん注目を集めたのは、やはりフンドシだった。1/21
 

亨同ホテルに詰め込まれた若い女たちは、みな部屋の窓からハンケチを振って助けを求めているようだが、私にはどうすることも出来ない。1/22

バス停でバスを待っている妻が「バス停の傍の橋に可愛いタヌキがいりよ」と電話してきたので、自転車で駆け付けると、なるほど可愛いコダヌキがいたので、「タヌキよ、タヌキよ、こっちへ来い」と誘うのだが、橋の半分のところまでしかやってこない。1/23

そのロシアのホテルが沈んでいく地面から、2本の手が伸びていたので、1本はサカモト君が、もう1本はキタジマ君が、ぐっと握って引っ張り上げると、どこかで見たことがあるような顔つきの男が、姿を現した。プーチンならぬリプーチンだった。1/24

カクミとかいう女が逃げこんできたので、しばらく匿っていたら、マスコミが殺到して、我が屋は足の踏み場もない。1/25

この国でいちばんの悪党を、おらっちは一刀のもとに、切り捨てたのよ。1/27

王宮では、毎日新曲を必要としていたので、私ら作曲家は、朝な夕なに、既存の有名曲からサビをぱくった疑似新曲をでっち上げて、お茶を濁していた。1/28

次々にブルックナーの交響曲第5番が演奏されるが、どれが原典版でどれがハース版あるいはノヴァーク版であるのかさっぱり分からないので、おらっちは全部を同時に演奏してくれるように頼んだ。1/29

今朝はいくら時間が経っても7時にならないので、それまで短歌を詠もうとするのだが、1首もできなかった。1/30

天下分け目の大勝負の日に、以前私と付き合いのあった2人の女性が大勝利を勝ち取ったので、少しは私も浮かばれるかと期待したのだが、そうは問屋がおろさなかった。1/31