noise 音 騒音

 

スズメに会う

三栄町の
公園で

スズメに会う

チチと
いう

ハクセキレイにも
たまに会う

チチチチチ
という

海辺で
磯ヒヨドリとも

出会う

燕のつがいは
チキチキと鳴いて飛んでいた

曲線を
描いてた

声の底にノイズがあり
遠い君がいた

 

 

 

drink 飲む

 

帰りには

新丸子の
ひとつ外れた

道を帰る

夜道に
いくつかの花が咲いてる

白い花や
黄色の花や

うすいむらさきの花が
咲いてる

足の親指の付け根が痛む

痛風
なのか

ゆっくり
そろり

歩いて
帰る

白い花を見た

帰って
芋焼酎を飲んだ

 

 

 

「ために」の出番

 

辻 和人

 
 

ぐっぐっぐっ
鍋の中にあるのは
カレー
かっかっかっ
からぁーいん
ジャガイモの
かっかっかっ
皮を剥いて
ニンジンと一緒に一口大に切って
ゆっゆっゆっ
茹でるん
今日は土曜日
だけどミヤミヤ出勤の日
大学の教務課って土曜日もやってるん
交代で
しゅっしゅっしゅっ
出勤するん
かっかっかっ
カレーの出番
かずとん、かずとん、かずとんとんの
数少ないレパートリん

窓の外には桜の花びら
ピンッ、ピンッ、ピンッ
ピンクが吹雪いて
夕闇が明るい
庭に桜が植わってるマンションって良しですよ
こんなマンション見つけてくれたミヤミヤって良しですよ
よしっよしっよしっ
ミヤッミヤッミヤッ
そんなミヤミヤの帰りを待って
食事を作る
学生さんたちのために職場で頑張っているミヤミヤのために
カレーを煮る
ミヤッミヤッミヤッ

ファミ、レド、ソラ、シシのために
毎日ご飯を用意していたなあ
安売りの大袋に詰まったカリカリをお皿に移して
それだけじゃ寂しいので
猫缶も乗せてあげる
どうぞ、召し上がれ
ぼくに対して何の遠慮もないファミは真っ先にズカズカ近づいてきて
ふゅっふゅっふゅっ
鼻を細かく震わせて匂いを確かめると
前足を踏ん張って「食べるぞ」という態勢を整える
ガリッガリッガリッ
時折頭を起こして
噛んだご飯をゆっくり飲み下す
その、遠くを見るような眼差し
ぼくを貫いていってそのまま色褪せた壁に突き刺さるん
ぼくに対する感謝なんて込められていない澄んだ眼差しに
ドッキドッキドッキ
食べ終わったファミは舌なめずりしてから
ちゃぴちゃぴちゃぴ
おいしそうに水を飲んで悠々毛繕い
やがてそろりそろりとレドとソラが入ってくるん
シシは部屋に入って来ないのでベランダにお皿を出してやるん
ガリッガリッガリッ
ガリッガリッガリッ

夕闇がほんとの闇に変わってきた
そろそろミヤミヤ、帰りの時間が近いかな

ぐっぐっぐっ
ジャガイモもニンジンも柔らかくなってきました
いざ、投入の時
タマネギ刻んで
トマト切って
じゅっじゅっじゅっ
炒めて炒めて炒めて
ざぁっと一気に鍋の中へ
トマトは大きいのを1個丸々使うのがかずとん流
そろそろサイドメニューも作りますか
レタス刻んでアボガドの実掬って
スモークサーモンを添えればサラダ一丁あがりん
酢にオリーブオイルと塩・砂糖、それにお醤油を少々加え
即席の和風ドレッシングもできあがりん
お湯を沸かして
さっき炒めたタマネギの残りを入れてスープの素を加えれば
なんちゃってオニオンスープもできあがりん
おっとそろそろお肉も投入するかな
ざくっざくっざくっ
解凍した鶏肉切って
じゅっじゅっじゅっ
ワインを少々加えて炒めて炒めて
ざぁっと一気に鍋の中へ
肉も野菜も切り方が実に不均等
男の料理はお手軽だねえ
ねえっねえっねえっ

ミヤッミヤッミヤッ
自転車を走らせて家路につくミヤミヤ
真っ暗な中、細いライトをしっかり灯して
表通りは車が多いから裏通りを選んで
路地から飛び出してくる人がいるかもしれないから
交差点が近づくごとに
きゅっきゅっきゅっ
ブレーキ握って
慎重に自転車を操るミヤミヤ
一日中学生さんたちのために
忙しく書類を作ったり問い合わせの電話をかけたり
誰かの面倒を見るなんて発想が一切ないファミとは大違いだけど
夜になればお腹が空くことは同じ
さ、一旦火を止めていよいよカレー粉投入
まだ冷える4月上旬の夜にカレーライスはおいしいよ
かっかっかっ
からぁーいん
あっあっあっ
あったかーいん

ミヤッミヤッミヤッ
ミヤッミヤッミヤッ
ぼくはさ
誰かのためになんて発想はない人だったんだよん
けど
ファミ、レド、ソラ、シシが空きっ腹抱えてちゃしょうがないん
ミヤミヤがお腹空いてちゃしょうがないん
ぼくはさ
万物の霊長らしき「人間」に生まれたん
先進国らしき「日本」に生まれたん
家を継ぐらしき「長男」に生まれたん
安月給だけど安定してるらしき「正社員」になったん
亡くなったおじいちゃんは参謀本部に勤めた軍人で
戦争はいけないと言いつつ孫たちに勲章をいっぱい見せてくれたん
ギラギラ光って
怖かったん
「ために」するのはやだな
「長男」はやだな
「日本」はやだな
「人間」はやだな
でもって「正社員」もやだな
なのにどれもやめられない
困って祐天寺の六畳一間のアパートに引き籠ったん
居心地良かったん
20年そこで眠ってたん

ところが何と何と
ファミのために、レドのために、ソラのために、シシのために
ご飯作らなきゃいけなくなったん
突然「ために」が降ってきたん
カリカリに猫缶乗せ続けて
何と何と

ぐっぐっぐっ
カレー煮てるん
「異性愛者」として結婚して
名字を変えさせてしまったミヤミヤのために
カレー煮てるん
おたまで鍋を掻き回すと
疲れてお腹すいて自転車走らせてるミヤミヤの姿が
ぐっぐっぐっ
「ために」「ために」「ために」って
浮かんでくる

カチャッチャッチャッ
鍵が回る音
ミヤミヤ、帰ってきたん
よーし、最後の仕上げ
鍋にミルクをコップに4分の1程注ぐん
こうすれば味がまろやかになるん
うん、おいしい
これぞかずとん流
「お帰り、ご飯できてるよ。」
「ただいまぁ、夜桜きれいだねえ。」
コートを脱ぐん
ミヤミヤの生身が現われるん
「ために」が立ってるん
かっかっかっ
からぁーいん
あっあっあっ
あったかーいん

 

*「ミヤミヤ」「かずとん」の呼び名については
空0「かずとんとん」をご参照ください
空空0https://beachwind-lib.net/?p=2247

 

 

 

褐色のコスモス

 

今井義行

 

 

蒼空よりも 俄雨よりも 薄曇りがすき
それは・・・・・・。
翔ぶ心よりも 濡れそぼつ 服よりも のしかかる 気圧がなく

Highになって
墜落死する ことなどなく Lowになって
渇愛死する
ことなど なく────

手ぶらで 暮らしていきやすい お天気です
そんなふうに 想える 季節が 在るんですね

わたしの大脳には、チョコレートコスモス※
が 夥しく 咲いています
神経の 網の球体のなかの 混沌、 野原に
黒紫の華々。 脳の隙間に霧が漂っている
春なのに 褐色の細ながい 秋(クキ)が
巡らされ 靡いている Cosmos────宇宙の秩序

宇宙の秩序 さ迷う 混沌の 野原が。

(わたしは 花にあかるくなくて、ネットで 出会った
イメージとしての花を 心情にあてはめて 象徴させる者です)

5月の早い朝 陽の射さない わたしの部屋へ
とても激しく 雨の降る音がした
横殴りの 風の音も 響いてきた
朝だというのに 赤い夜みたいだ、と想った

チョコレートコスモス群は茎の
ねじれに 惑いつつ 細ながい
指示系統に 或る伝言を 託したようだ 「起て」と。
けれど その指示が 末端まで届かない

ベッドから 起ちあがると 足の裏が
厚い毛糸の靴下を履いているようで体の感覚がない それで わたしは
ベッドの縁に 腰を沈ませたのだった・・・・・。

コスモスは 倒れても起ちあがる 華々なのに
「こころのかぜ」を患った チョコレートコスモスの華々が
「尿を」と 指示系統に 次の伝言を 託しても
トイレに行った わたしの股の細い茎は
うなだれたまま 尿道から
一滴の しずくさえ 落としは しなかった

これは、心因性の ≪広義の Impotence≫ なのだろうか────

Impotence を 勃起不全として捉えるのならば
いまでは ED外来が 多くある 時代だけれど
53歳になる わたしには 生殖は もう要らず
性愛の上で ひとつになるのは 器官の結合とも想えない
それが、お互いの 幸せ 希望で あるとは。

それは、随分 一方向的な 性愛への思考です

「こころのかぜ」を患った チョコレートコスモスの華々が
「愛を」と 指示系統に 次の伝言を 託しても
その指示が 末端まで届かずに 半ばで 折れる

近ごろ、稀有な 出来事が ありました
わたし、生身の花を観にいったのです 不意に散歩したくなって
亀戸天神の まばゆい藤棚で 風と戯れていた 花房
生身の花を観たと 共に 生身の風が観えたよ、と

・・・・・・・・・・そんなふうに 感じられました

朱い太鼓橋を 沢山の人たちが 渡っていくのが観えました
お参りというより彼岸へと向っていくようでもありました

そして、休息日の 週末 前日の 軽ヨガプログラムの
余韻に 低温浴のように 一人 まどろんで いたとき
滋養のある ものを持って 訪ねてきて くれた人がいた

インターホンの無い戸を ノックする音がして開けると
その人は 風に膨らむ ワンピースを着て 直線的に立っていた
しろやあかの コスモスのように

水彩画のモデルに なる訳ではなく、

やがて その人は 薄物になると 曲線的な美になった
そして、滑らかな白磁の 一輪挿しのように「きっと」
と わたしに 言った 「愛をつづける」と

「愛、をする」と言ったのだ

わたしは シャツを 脱いだ
シャツを放って ベッドに 並んで 二人は横たわった

それなのに────・・・・・・・・・。
茎の華奢なコスモスが 雨風に倒れても 起ちあがるようには
わたしが 起ちあがらない (ごめんなさい。)

どのように しても、して もらっても

わたしの 精嚢では
いまも 精子が 生産されて いるのか、精液は 出ない
気配さえない 指示系統が 精管に 至っていないようだ

Highになって(蒼々と舞い過ぎ)
墜落死する ことなどなく Lowになって(泥溜りに嵌って)
渇愛死する
ことなど なく───

「High Low , Yes No で 死んでいった人が多くいる」
と、わたしは訪ねてきてくれたその人にベッドで言った

(チョコレートコスモス それは わたしの 脳内でしか 咲いていない
けれども・・・・・ その華々が 褐色であることに 力を、感じはするんだ)

Highになって
墜落死する ことなどなく Lowになって
渇愛死する
ことなど なく────

「そうやって 死んでいった人が多くいる」と
わたしは 訪ねてきてくれた 人にベッドで言った

そして「わたしって誰?」と相手の檸檬の形の
黒目に少し寂しげな 微笑がやどっているのをみた

「 High Low , Yes No 」の間の 空洞のトンネルを生きている
わたしは 相手の目をみて 想った あなたは、
わたしを “ どうして それほどに 愛して くださるの ですか ”

“ どうして このような わたしを ”

(それはもう、だれにも わからない 神の領域として
すべて まかせて みる ことに しよう)

わたしの大脳には、チョコレートコスモス
が 夥しく 燃えています
神経の 網の球体のなかの 混沌、 野原に
黒紫の華々。 ほかのコスモスとは違って
多年草の 褐色の細ながい 秋(クキ)が
巡らされ 靡いている Cosmos────宇宙の秩序

Cosmos────宇宙の秩序 さ迷う 混沌の 野原が。

彷徨も また 秩序、なんだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、二人は 外へ出て
古くからの住宅街を歩いていった 狭い露地には各々の人の
育てている 花や実があった

地下足袋や皮手袋や作業衣を扱う商店のある
交差点を通り過ぎていくと
空は夕暮れてきて 葡萄色にそまった

わたしは、その日 二人がしたことを
けっして 忘れはしない、と 想った───

 

※チョコレートの甘い香りがする。耐寒性のある多年草で、
空0原産はメキシコ、大正時代に渡来した。(ネットより引用)

 

 

 

家族の肖像~「親子の対話」その7

 

佐々木 眞

 

 

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「お母さん、ぼく、さいたま市好きですお」
「そう、それは良かったね」
「さいたま市は、浦和、大宮、与野市からできたんだよ」
「そうなの?よく知ってるね」

「お父さん、京王線、京浜東北線に似ていたよ」
「へえ、そうだった」
「そうですよ」

「お父さん、「再び」は再放送の再でしょ?」
「そうだよ」

「お父さん、無理しちゃだめでしょ」
「そうだよ」
「お父さん、無理の無って無いの無でしょ?」
「そうだよ」
「僕、無理しなかったよ」
「そうかい」
「無理よ、無理よ、無理よ」

「お父さん、小田急の回数券買った?」
「買ったよ。今日藤沢まで行って11枚買ってきたよ」
「wwwwww」

「お父さん、みなさんの英語は?」
「レディーズ・アンド・ジェントルメンだよ」
「みなさん、みなさん」

「おとうさん大弱りってなに?」
「とても困ってしまうことだよ」
「大弱り、大弱り」

「お母さん、コレステロールてなに?」
「血液の中のあぶらのことよ」
「コレステロール、コレステロール」

「お父さん、ちょっと待ってねの英語は?」
「ウエイト・ア・モーメントだよ」
「ちょっと待ってね」

「ぼく、明日ふきのとう舎から帰ってきますよ! 帰ってきますよ!」
「耕君、ほんとうはファミリーナ宮下行きたくないの?」
「行きたくないお」

「ぼく「トイレの紙そんなに使うな」って言われちゃった」
「そうなんだ」
「「耕さんダメ」っていわれちゃったの」
「それでファミリーナ行かないの?」
「そうだお」

「お母さん、戦争ってなに?」
「国と国とが戦うことよ」
「戦争嫌ですねえ」

「お母さん、崖好きですお」
「ガケ?」
「崖、高いですお」

「お母さん、ぼく常用漢字いっぱい書きますよ」
「いっぱい書いてね」

「お母さん、哀愁って悲しいことでしょう?」
「そうよ」
「あいしゅう、あいしゅう」

「お母さん、侮辱ってなに?」
「馬鹿にすることよ」
「侮辱、嫌ですねえ」

「林さんの心臓止まったの?」
「そうよ」
「心臓止まるの、嫌ですねえ」

「お父さん、ワイドドア凄いよね」
「どこのワイドドア?」
「小田急だよ」

「お母さん、志ってなに?」
「思いよ」
「こころざし、こころざし」

「お父さん、分かりませんの英語は?」
「あいどんとのお」
「分かりません、分かりません」

「お父さん、入るときはお邪魔します、失礼しますでしょ?」
「そうだよ」
「失礼します」

「お母さん、火元責任者ってなに?」
「火の管理をするひとよ」

「お母さん、マナーモードってなに?」
「電車の中でうるさいくしないようにすることよ」
「マナーモード、マナーモード」

「マナーモードってなに?」
「携帯が聞こえないようにするのよ」
「耕君、マナーモードをやめる?」
「いやだお」

「お母さん、心配の配ってくばること?」
「そうかあ、心をくばることが心配するってことなんだ」
「そう、そうですお」

「お母さん、麻薬ってなに?」
「痛い時のお薬よ」
「伊藤蘭が「麻薬なら私のところにあるわ」って言ってたよ」
「へええ、そうなの」

「こうぞうさん、先生だったでしょ?」
「そうよ」
「体調崩したのはこうぞうさんでしょう?」
「そうよ」

「横須賀ってぼうえい大学があるとこでしょう?」
「そうよ」

「お父さん、いとこの英語は?」
「カズンだよ」
「いとこ、いとこ、いとこ」

「お父さん、さらには、ってなに?」
「もっと、だよ」
「さらに、さらに、さらに」

「お父さん、陰は山陰線のかげだよね?」
「そうだよ」

「お父さん、残酷ってひどいことでしょ?」
「そうだよ。良く知ってるね」
「ざんこく、ざんこく、ざんこく」

「お父さん、意地っ張りって、頑固なことでしょう?」
「そうだよ」

「お父さん、約束の英語はなに?」
「プロミスだよ」
「僕、約束守るよ」

「お母さん、デートてなに?」
「待ち合わせて人と会うことよ」
「ぼく、デート好きだよ」

「お父さん、正面てなに?」
「wwww」

「お父さん、要らないの英語は?」
「ノット・ネセサリーかな」
「要らない、要らない」

「お母さん、圧死ってぺっちゃんこになることでしょ?」
「えっ、どうしてそんなこと知ってるの?」
「圧死、圧死、圧死」

「お母さん、早くいらっしゃいって、早く来なさいのこと?」
「そうよ」

「お母さん、つまらないってなに?」
「面白くないことよ。耕君、つまらないの?」
「つまらない、つまらない、つまらない」

「お父さん、支えるって助けること、でしょ?」
「そうだよ。耕君、誰を支えますか?」
「ぼく、お母さん支えますよ」

「お母さん、おっかさん、てなに?」
「おかあさんのことよ」
「おっかさん、おっかさん」

「お母さん、バクダンってなに?」
「バクダンはねえ、バーンていうやつよ」
「バクダン、嫌ですねえ」

 

 

 

月を追って

 

Hitoha Nao

 
 

image1-9

 

見えない月を追って
わたしは 走る

夜の川辺の 草原を

空白空どこまで駆けた

空白空草が脚をうつ
空白空どこまで駆けた

空白空風が頬をうつ

気づけば

草の葉が
照らされるように
浮かびあがっていた

新月の輪郭が
わたしの足もとを

照らしているのだ
 
空白空白空白空白空白空白空白空白空白2016年6月

 

☪️新月とは、月と太陽が重なった時に起こる。夜空には月が出ていないが、月は見えないだけで、太陽と平行に移動している。新月は新しいことを始めるのに最適とされ、これから満月に向かうというエネルギーを受けて、「新月の願いごと」が注目されている。

 

 

 

光の疵 遠方の赤

 

芦田みゆき

 

 

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13401358_961759023942673_1382017731_n

 

大きな鳥が
ゆったりと
空を横切る
その時
あたしの片側の頬が青黒く染まる

鳥の翼は
鈍い金属のようにみえた

羽搏きが巻き起こした風は
いつまでも地表を揺らす

あたしはからだを起こして
前を向く
遠方の赤は
なにも変わっていない

追わなくては
走っても
走っても
けして近づくことのない

 

 

 

secret 秘密

 

昨夜
新幹線で帰った

車窓には
たくさんの灯りが

流れてた

悠治さんのシンフォニア11
を聴いてた

消えさるもの
流れさるものを

悠治さんは抱いてた

帰り着くと
闇の中

白い百合の花たちが咲いていた

モコの首を齧り
わたしは狼の声をだして眠った

 

 

 

ピカピカの薬缶の横っ腹に俺っちの姿が映ったっすよね。

 

鈴木志郎康

 

 

トイレの帰り、
ガスコンロに乗った薬缶の横腹に、
俺っちの上半身裸の体が映ってたっすね。
思わず、俺っち、思ってしまったっす。
物に人が映るって、
物に人の影が残るって、
爆心地から260m離れた住友銀行広島支店の
入り口の階段に座ってた人の影、(注1)
ピカドンが残した影、
五十年前に広島に住んでて、
俺っち、その影を見たっす。
いやああ、あらゆる事物に、
俺っちは、
姿を映して、
影を残して、
生きて来たんだって、
ことでっすっすっす。

5月27日の夕方、
オバマ大統領の広島訪問の中継を見たっす。
ヘリコプターで広島の空から降りて、
市内を自動車で移動して、
平和公園に着いて、
原爆資料館を見て、
慰霊碑に花輪を捧げて、
目をつぶって、
そして
「71年前、明るく、雲ひとつない晴れ渡った朝、
死が空から降り、
世界が変わってしまいました。」(注2)
大統領の演説が始まったっす。
俺っち、あれれ、
原子爆弾を落として、
広島市民に死をもたらしたのは、
米国のB29エノラゲイじゃなかったのかいなって、
ぐっときたっす。
小学校3年生で、
東京の江東地区で、
B29の焼い弾の絨毯爆撃の最中、
母親と逃げた俺っち、
叔父従兄弟従姉妹が焼死させられた俺っち、
死が降ってきたなんて、
そんなこと、
言われちゃ、
71年が過ぎたとはいえ、
謝れとは言わないが、
腑に落ちなっていっちゃ。
広島市民だって、
そうじゃないかなって。
ウウン、グッグ、
ウウン、グッグ。

オバマ大統領の演説は、
聞いてると、
被爆した人たちの立場に、
立つために広島に来たと言ってるっちゃ。
だから、死が降ってきたってこっちゃ。
文学的だっちゃ。
ウウン、グッグ。
「核攻撃の承認に使う機密装置を持った軍人を同行させて」(注3)
平和公園に、
核兵器の無い世界を追求する思いで、
来たっていうこっちゃ。
慰霊碑の石碑前面の言葉の、
「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」
この言葉の主語になるために、
「私の国のように核を保有する国々は、
恐怖の論理にとらわれず、
核兵器なき世界を追求する勇気を
持たなければなりません。」(注2)
と言うこっちゃ。
米国が持ってる数千発の核兵器を
即座には捨てられないんだなっちゃ。
思いとかけ離れてて、
結構、辛いのかもしれんっちゃ。
言葉だけで終わらせないでくれっちゃ。
ウウン、グッグ、
ウウン、グッグ。

原爆投下の映像に拍手し、(注4)
核攻撃の承認の機密装置を
傍らに、理想を語る
大統領という役職の
男の存在に、
あの目を瞑った顔のアップに、
俺っち、
ぐっときちゃったね。
ウウン、グッグ、
ウウン、グッグ。

俺っち、薬缶をピカピカに、
ピカピカに、
磨いたっす。
毎朝、紅茶を沸かしてる
ピカピカの
薬缶の横っ腹に、
キッチンに立ってる
俺っちの
姿が映ったっすっすっす。

 

 

(注1)広島原爆資料館の展示
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/index.html
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/outline/index.php?l=J&id=31

(注2)朝日新聞2016年5月28日朝刊

(注3)朝日新聞2016年5月31日朝刊

(注4)FB:小西 誠
2016年6月1日 11:42 ·
原爆投下の映像に拍手するオバマ、十字を切るプーチンーこれが、日本人(と被爆者)が「ヒロシマで歓迎」したとする、オバマの本当の姿だ!

戦争と原爆とプーチン氏とオバマ氏
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https://www.youtube.com/watch?v=cR5zoW1W4ac

アメリカの権力がやらせていること。その権力者に洗脳された兵士達の言動。 そのアメリカのイエスマン、日本。

ノルマンディー上陸作戦記念式典。プーチンとオバマの違い …
http://richardkoshimizu.at.webry.info/201501/article_12.html