近所の仲間の論法

 

工藤冬里

 
 

近所の仲間が落ちぶれて畑を手放したり
包丁を持って押しかけたり
結婚したり
弾劾裁判を待ったりしているなら
近所の仲間は
近所の仲間というだけで
きょうだいである
たしかに同じ苗字も多い
皆で石を投げる
東温市の近所の仲間よ
そうやって正しいことを言い続けよ
欠けたところを隠すために

完全な正しさはきみたちが描写できるものではない
それは〇〇のようだ、という言い方でしか表現できない
故に詩ではない
自在で柔軟な戦車だ
その修辞は以下の構造をしている

「コレクターと寒さは似ている
コレクターは集めるだけで
寒さは

寒いだけだ

 

 

 

#poetry #rock musician

Can you tell wheat from barley?
君は小麦と大麦を区別できますか。 *

 

さとう三千魚

 
 

recently
with the woman

in the living room

also to talk
lost

we are surprised by the sound of the phone

the dog moco

she seems happy
on the warm electric carpet

she is sleeping by crawling

when I open the shoji a little
I can see the west mountains in the vertical scenery

it’s sunny
clouds are flowing

the sparrows are not on the wire today

Can you tell wheat from barley *

 
 

ここのところ
女と

居間にいる

語ることも
なくなり

電話の音に驚いてる

モコは

喜んでいるようで
暖かい電気カーペットの上で

腹ばいに眠っている

障子をすこし開けると
縦長の景色の中に西の山が見える

晴れているんだね
雲が流れている

雀たち
今日

電線にいない

君は小麦と大麦を区別できますか *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

代行

 

工藤冬里

 
 

人生がまだあると思っている頃の金の使い方には宵越しの云々の荒さがあるが
人生がもうないと思うようになると早く済ませなさい的の焦りからある面さらに荒くなる
貨幣は死者のアーカイブのために取り置かれているマイナス茶碗であり
貸した金も資産に含める銀行の絡繰はジュビリーによってしか解決できないニ人スキーの分裂病を生んだ
かれの跳躍は即ち下降であり上下増減何れも銀行の資産となる
貸せば貸すほど円トロピーは増大するから
我らの不景気は換金できるマイナス果実の生る木であり
スナック歓呼鳥が苦しめば苦しむほど頭取は喜ぶ
それで私は池の端にパブを作った
リヤガーデンにベンチ付きテーブルを組み
労働者階級のムスッとした娘を立たせて
ビターのサーバーを並べた
宣伝はせず
上下する田舎道のために
若手の代行要員も用意したのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

三つ編みおさげの彼女の

 

ヒヨコブタ

 
 

たくさんの年始の挨拶のなかに
おばの懐かしい文字があった
幼い頃に農家へ養子に出たその人の
一文字一文字が胸をうつ

元気でいればまたお目にかかることも出来るでしょう
そのときを楽しみにしています

親の兄弟姉妹のなかでも一目おかれる彼女は
確かにそう思っているのだと
一つひとつの文字の強さにそう感じる
この冬も家のまわりは吹雪くだろう
田畑は雪に覆われて
地吹雪も酷いだろう

腰はとうに曲がり
いつも生まれたての玉子を持たせてくれた
訪ねると持っていった以上の収穫物を
美味しい米も美しい花も

彼女にいまとても会いたい
白髪の長い髪を乙女のように三つ編みにした
愛らしいひとに

わたしが生まれたばしょではないのに
訪れるたび先祖の開墾をおもうばしょに
確かに彼女はいる

叶わぬことも
叶えるために
日々呼吸をしている
また彼女に会うために
またあの地に立ち
あらゆる記憶をつかみとるために

 

 

 

He was so kind as to show me the way.
彼はたいへん親切だったので、道を教えてくれた。 *

 

さとう三千魚

 
 

of glass windows
inside

shoji

when I open only a little

on electric wires
there are sparrows

there is the west mountains

today
the west mountains

it has a dark gray color

was the person discharged?

in that large living room bed
lying down

is he there

withered flowers in the garden over the glass

is he staring

Poor Poor
told me

be there

He was so kind as to show me the way *

 
 

ガラス窓の
内側の

障子を

すこしだけ開けると
電線に

雀たち
いる

西の山がいる

今日は
西の山は

濃い

灰色をしている

そのヒトは
退院したのかな

あの広い居間のベッドに
横になって

いるのかな

ガラスの向こうの庭の枯れた花たちを

見つめて
いるのか

プアプアが教えてくれた

そこに
いる

彼はたいへん親切だったので、道を教えてくれた *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

When did this world come into being?
この世界はいつ生じたのか *

 

さとう三千魚

 
 

dawn

I was awake
I was listening to the sound of rain

on the roof
eaves and

on the boulders in the garden

rain
will be hit

there was a sound

countless rains
flat

on the ground

will be hit

also in the ocean
rain

will be hit

When did this world come into being *

 
 

明け方

目覚めてた
雨の音を聴いてた

屋根や
軒先や

庭の玉石に

雨は
あたっているのだろう

音がした

無数の雨が
平らな

地上に

あたっているのだろう

海原にも
雨は

あたっているのだろう

この世界はいつ生じたのか *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

「道程」の引用されるclimate futurismの光景

 

工藤冬里

 
 

建物がごちゃごちゃと 校歌を唄っている
バッハにとってのフランスはVOGUEのようだった?
準備しなければならない即興は身に余る
地球が禁煙して
随分経つ
参道は俯いて
携帯を見る人々の
クーポン用アプリの檻
バッハにとってイタリアは
Lanciaみたいなもの?
不死の主題は同じでも
山が、木が、代わりになっている?
コロニーの歌を唄うとでも?
集合の重なりが青くなっていて
そこに経済ITアナリストの正当性のみが簾のように呼んでいる
命のクーポンを前もってゲットしようと
人々は俯く
手指から首に
首から頭上に
疲労は二酸化炭素のように上っていく
ああ自然よ
父よ
ぼくの前に道はあるが青い
ぼくの後ろに道はできない

 

 

 

#poetry #rock musician

花の起源

 

村岡由梨

 
 

2007年に生まれた次女に『花』と名付けたのは、
「平和」を想起させる名前にしたかったから。
『花』の漢字を分解すると、
「艹」「イ」「ヒ」となる。
「艹」は植物を、「イ」は生きている人を、「ヒ」は死んだ人を表す。
生きている人と死んだ人の上に、草花が生い茂っている。
その光景が何だかすごく自然で平和に思えて、
娘を『花』と名付けたのだった。

今、世界は平和ですか。
世界中の人々は今、まるで
空っぽの鳥かごを見て呆然としているみたいだ。
その鳥かごにはきっと、
愛とか、慈しみとか
大切で温かな生き物が入っていたはずなのに、
それがどんなものだったのか、世界は思い出せずにいる。
盗まれたのか、殺されたのか、
それを失ったことがただ悲しくて
ドクン ゴボッと ナプキンに落ちてくる
経血みたいに揺れて、
徐々にスピードを上げて汚れていくみたい。

「ママ、ここにあるナイフで手を切ったら、どうなるの?」
「すごく痛いと思うよ。血も出るだろうし。」
「ふーん」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、別に。」

いや、別に。って
何て悲しい言葉だろう。
もっと私を信じてほしい。
心を閉ざさないでほしい。
自分勝手な私がそう言う度に
君は私から遠ざかっていく。

この世界の綺麗事の一切を脱ぎ捨てて、
使い物にならない自分をビリビリに破り捨てて、
手首をナイフで切り刻むように
君の内側に、真っ赤な言葉を刻みたい。

私が死んだら、そこらへんにある原っぱに
適当に転がしておいていいよ。
ぞんざいに扱っていい。
時々思い出してくれるだけでいい。
そして偶に生きている美しい君がやってきて、
ウジのわいた私の傍に寝っ転がってくれたなら、
それが私たちの「平和」なのかもね。なのかな。
ほったらかしにして、最後に残るものが
きっと大切にしなくてはならないもの。
骨片とか。
思い出とか。

ただそれだけの、少し拗ねて書いてみたお話。

素直になれない、ただそれだけの話。
きれいな思い出の上に、
いつかきれいな花が咲くことを願って。

 

 

 

Did they all embark on this ship?
彼らは全員この船に乗りましたか。 *

 

さとう三千魚

 
 

this morning too
open the window

looking at the west mountains

this morning too
looking at the numbers in the morning newspaper

“umaretekurutate
konndohakotaniwariyanogotobakaride
kurusimaanayouniumaretekuru “**

“Occasional words” this morning

Kiyokazu Washida
he was quoting “Eternal Morning” ***

368,640 people (+2764)
5193 people (+73)
99,203,600 people (+447,386 people)
2,129,597 people (+8551 people) ****

one side of the newspaper morning edition
looking at the numbers

beyond that
there are people

this morning too
the west mountains are standing

in the blue sky
standing

Did they all embark on this ship *

 
 

今朝も
窓を開けて

西の山を見てる

今朝も
朝刊の

数値を見ている

“うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあようにうまれてくる” **

今朝の”折々のことば”

鷲田清一さんが
“永訣の朝”を引用していた ***

36万8640人(+2764)
5193人(+73)
9920万3600人(+44万7386人)
212万9597人(+8551人) ****

朝刊の
一面の

数値を見ている

その向こうに
ヒトビトがいる

今朝も
西の山は佇っている

青空の
下に

佇ってる

彼らは全員この船に乗りましたか *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
** 宮沢賢治「永訣の朝」より引用
*** 朝日新聞「折々のことば」のこと
**** 朝日新聞 2021年1月26日朝刊 一面「新型コロナ」の国内・世界における感染者数・死者数・増加数より引用しました

 

 

 

#poetry #no poetry,no life