郵便配達夫を追いかける

 

工藤冬里

 
 

私とは
出されてしまった手紙
封をされて
呼吸している
紙でも肉は切れる
開封されてしまったら髄まで断たれる
骨を継ぐのはセメント
樽の中でランガージュが回っている
血と骨
言葉とセメント
血も言葉で継げるか
ウイルスで刻印された血は開封前の赤紙
食事のたびに欠ける歯の
軽さに苦しむ
禁止された黒白鍵盤の
陰鬱な漆喰土塀の街並みを
ランガージュが走り回る
歯並びは土佐電鉄のように
「ごめん」と「いの」を行き来する

 

 

 

#poetry #rock musician

Let’s row the boat by turns.
交代でボートを漕ごう。 *

 

さとう三千魚

 
 

on the sofa
slept

last night
I slept on the sofa in the living room

moco who was by my side
the woman took moco to the bedroom

still dark morning
awake

go to a dark room
listen to Yuji Takahashi’s Goldberg Variations

there
there is an open sky

children’s
at the end of play

there is an open blue sky

wind
blowing

children
looking at the invisible wind

there is a man playing the piano there

I rowed a boat into the dark sea
I have rowed a boat alone

the sun rises
the sea surface was scattering light

when was it
someday

Let’s row the boat by turns *

 
 

ソファーで
眠った

昨日の夜も
居間の

ソファーで眠った

傍らにいた
モコは

女が寝室に連れていった

まだ暗い朝
目覚めて

暗い部屋にいき
高橋悠治の

ゴルトベルク変奏曲を聴く

そこに
ひらかれた空がある

子どもの
子どもたちの

遊びの果ての

ひらかれた青空がある

風が
吹いている

子どもたち
見えない風を見ている

そこにはひとりのピアノ弾きの男がいる

わたし
暗い海に

ボートを漕ぎ出した

ひとり
ボートを漕ぎ出したことがある

やがて日は昇り
海面は光を散乱させていた

いつだったか
いつか

交代でボートを漕ごう *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

手のある鮒鮨の風景

 

工藤冬里

 
 

箒の持ち方も知らず
悩みや不安もなく
家の排水を二の次にして木の気持ちを大切に
自分から触りにいった
牡丹色の服を着て箸を持った そばに
いーられるーと思い出す きみの
ドールチェアーンドガッバーナーのそーの
蕎麦に痛いと思わせる饂飩
下校途中の子らにさようならと言われて泣き崩れ
距離を感じたり見下されていると感じたりさせなかったので
カレーと一緒にいると落ち着く乾麺
をよく折る地上の水道管を折る
スペクタクルの狭間で!
土地にいつも頼って死ぬ天麩羅の父祖
に頻繁に真剣に折れた水折った泉
〽︎ひとりでいるのがこわくなる
折れた水折った泉水
仲間といる時も折れた水折った泉食べている時も折れた水折った泉
いろいろなタイミングで苦渋を言い表す折れた水折った泉
決定をする後に
助けを祈り求め
人に土筆
土手休み
マッサージチェア壊れて他の自分を優先し他の自分中心もみ・たたき弱中強五段階自己評価
菅総理
で快く許さない許さない熱心すべてに示せよ
予告編によると、ほとんどのメディアから受け入れられず隣人によって殺されることになっていたから手を抜くこともできたがそうはせずガラ聲で熱い小便をした謙信と孫悟空がにちゃにちゃして道
水道管の破裂を予期しながら
不完全な他の自分とは比べ物にならないほど
身体面でも精神面でも完全で周囲のスイマーと圧倒的な差があった 冬
それでも謙遜に睡魔と闘い他の動物としての自分に仕えた
辛さを抱きしめる強さ
仮名に圧力
放して倣うもほうはん
実践男子大
東京男子大
御茶ノ水男子大  
東京男子体育大
東京男子医大
東京男子美大
一貫して辛く抱きしめる強さ
大切な教訓を何度も教え
東京男子大学
男子プロレス
さかなでしこ
身近に感じられるよう助け短大
逆撫出四股
しこたま神社
魚のくせに手が
あるので神経を逆撫でされる

 

 

 

#poetry #rock musician

俳句六首

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

妥貼的真珠
淚水最深處的心
雨中的鼓聲

佛陀的手印
未讀完的《地獄變》
舊約巴別塔

火燙的門楣
注解詩人的晚點
毀壞了重量

晝夜泳不息
銅管吹奏著松濤
淚是漏刻水

最初的時分
天公玉女飲序曲
曰:午時立春。

戰死的旗幟
兩隻乳房在夢中,
迷霧中,歲月。

 

 

・翻訳はこちらで
https://www.deepl.com/translator

 

 

 

I got lost in the forest.
私は森で道に迷った。 *

 

さとう三千魚

 
 

midnight
drunk

in the city
have walked

I have walked many times

drunk
I have hit a telephone pole

there is something

my forehead bumped to a concrete telephone pole

it hurts
I’m surprised

suddenly
I’m surprised when it hits

I wash my life with liquor

many times
washed

many times
many times

washed

I feel the wind when I wash it

I got lost in the forest *

 
 

夜中
酒に酔って

街の中を
歩いたことがある

なんども
ある

酔って
電信柱にぶつかったことが

ある

なんどか
ある

おでこがゴツンとぶつかった

コンクリートの電信柱
痛いね

おどろくよね

とつぜん
ぶつかるとおどろくよ

酒で命を洗う

なんども
洗った

なんども
なんども

洗った

洗うと風を感じるよ

私は森で道に迷った *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

セブン-イレブンに車を駐めて

 

工藤冬里

 
 

セブン-イレブンの前に車を駐めて
二つの時間を生きている
バイデンの時間は皮を被ったまま加速しておりトランプは剥き出しの無時間である
自転車を読んだ男が競輪新聞を停めている
メルボルンの友人が手を振る

 

 

 

#poetry #rock musician

Man is bound to die.
人間は必ず死ぬ。 *

 

さとう三千魚

 
 

how is it

do not know
what

is it sad
do not know

what
what is it

this morning

I walked

I’m alone on the banks of the stream
I walked

white bird
was there

it was standing in shallow water

notice
did it notice me

it flew away

the white bird flew away
the white bird flew away

it went
it flew away

there were no words

I didn’t understand
such a thing

Man is bound to die *

 
 

どうなんだろうか

わからない
なにが

かなしいのか
わからない

なにか
なにかが

今朝

歩いたよ

小川のほとりを
歩いたよ

白い鳥が
いたよ

浅瀬に佇っていたよ

気づいて
気づいてか

飛んでいったよ

白い鳥は飛んでいったよ
白い鳥は飛んでいったよ

いったよ
いった

言葉はなかった

わからなかった
そんなこと

人間は必ず死ぬ *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

阿部薫はミノが好きだった

 

工藤冬里

 
 

 

藍住にキラ⭐️星という若い夫婦のやっているラーメン屋がありそこには作者が死んだ「喧嘩ラーメン」全巻が揃っている
今日は四巻目を読んだら家系前夜的なものと対決していた
日本人の痴呆はラーメンの糖質から来る、と医者の本にあった
うどんなら機械的に「肉うどん、」としか注文できない肉体労働者達はだから圧倒的に正しい
なるべく麺以外の繊維質と蛋白質から食べるようにして
それでもとうとう麺に箸を付け始めて近づけた顔から突如死にたい、と口を突いて、周りに聞こえなかったか不安になり乍らも、今のこの死にたいは絶対録音できないだろうななどと思いながら食べた
店の裏手に回ると草の中に見事に半球のお玉杓子と柄杓、雷文のラーメン鉢が打ち捨てられていた
阿部薫はミノが好きだった
と今度は音声無しで思った
Bluetoothで聴いていたDUOと題された昔の自分の音源の、ふわふわと捩れたサックスが平田薫という人ではなかったかと考えたからだろう。
ミノは上胃である
何かの小説にギムナジウムでの無味乾燥な学問という描写のために牛の四つの胃のラテン語を暗記させられている場面があったが
音は
ふわふわのガムみたいなホルモンではなくて上ミノでなければならなかった

 

 

 

#poetry #rock musician

伊勢

 

松田朋春

 
 

この街はたぶん
はじまった時からふるびていて
神宮ばかりが青々と生命を集めている

水路も道も
樹皮の皺のように蛇行して
何かを守っている

疫病なんて何度も通り過ぎたと
誰も採らない道端の柑橘がささやく
すれ違うとき

汐の湯につかって
磯のように
表面を溶かす 

水も土も風も
体液と同じ味になるまで
あともうすこし

 

 

 

夜が鳴いている

 

小関千恵

 
 

きみはすぐにあかりをつけるから
夜が行方不明だ

夜が鳴いている

夜がきみを探して鳴いている

あかりを消して
みてごらん

押し入れに隠れた夜のこと
家出をした夜のこと

夜、 夜、 と 呼んでごらん

夜の鳴き真似を してごらん

眠れない夜に
まあるい夜が
寝息を立てているよ

夜はこたつでも
まあるくなるよ