subluxation

 

工藤冬里

 
 

TLネットワーク見てるとなんかサブカルのラスク齧ってる感に吐き気がしていたのがここにきて急に人が粒立って艶やかに
ネカフェのトイレで流れる音楽さえ
ターゲットなのだろう、オルタナ主体の有線がgreat song after great song
いまは削ぎ落とされて良くなってるんじゃないかとさえ思う
ヨーヨーマが明日モリコーネ追悼のオンライン・コンサートを行うと言ってる
モリコーネはヨーヨーマに、音楽とは空間、時間、エナジーの三つだ、と語ったらしい
モリコーネがそれを語った瞬間は、空間と時間とエナジーで充ちていたことだろう
しかしいまはその三つを運べない運送屋を見詰めなければならない
それを浮き彫りにするのが釣り堀屋の仕事であろう
後期ルネサンス以来のチェンバーが終わったのだから
風通しの良すぎる洞門が建築様式とならなければならない
そのための寒暖対応ではペスト医者の鳥頭の脱着の操作性がファッションの決め手となり
マツエク以外のコスメは絶え、頭部は鬼太郎の父親に変異するだろう
だから音楽を変えずに演奏空間をデザインするのではなく
ディスタンスを前提して音楽の方を変えるのが王道(バ)ロックだ
それは順番でいけばバロック前夜のマニエリスム或いは倍音としてのキュビズム前夜に対応するものになるだろう
顔の美がヴァーチャルに加速するとき忌避される筈の血が逆にさらに流れるだろう
左右から刺してくるシニフィアンの複製が無く
垂直なトレ・ユネールとしての
あまつかぜ
場の外では犬が泣き叫んだり歯軋りしたりしているだろう
音楽は言葉のsubluxationだ
ドグマ爺さんたち
土グマたち
浣グマに食べさせる野良の白
クマの子を散らすように
アースが産んだドグマ大使
愛は六千年限定のサブスクだ

 

 

 

#poetry #rock musician

解体屋ゲン

 

工藤冬里

 
 

彼の仕事は建設ではなく解体であった
それがその時期の一番建設的な仕事だった
パラダイスとは飲み放題で天女が舞い踊るような所ではない
それは弘岡さんとこの庭のように人がちまちま作り上げるもので
彼女が庭師になるための障害を壊すのが彼の仕事だった
庭師は長生きすると言われていたけれど
それは先取りの三角であって
先走って置かれた原理でしかない
彼の仕事はシバの如く破壊であった
パラダイスとは受け身で放り込まれるようなところではない
地上とはほんらい、尾道でハライソに寄ったら原マスミに出くわしましたというような
受け身で放下されるところではないのだ
隣の刑柱の男に約束したから
彼が来るまでに生きている者だけで急いで整地して
オリーブでも植えておかなければならない
三色スミレは大将の趣味じゃない
チューリップなら黒一色にするとか
それは彼女の趣味に任せるけれども
兎に角戻って来る者たちのために
いまの趣味のままで間に合わせる
だから身受けのハッピーエンドはダサくなりそうだ
それでいいじゃないか
社会と芸術の解体は彼以外には出来ない仕事だったが
その後は庭師たちの引き摺っている解体前の趣味で造園されるのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

アンディーの気苦労3

 

工藤冬里

 
 

誰もどこにも行けなくなっているうえに三日間SNSもzoomも使えなくなった
国連に関する暴露本なども出されて鉄と粘土は最後まで混じり合わぬ演劇を続けた
しかしアンディーの家にはフレッツ光があったので行政職員や町内会の人々の間ではちょっとしたスターになり菓子折りなど差し入れがあった

最後にすべての犬猫やすべての家畜の産んだ最初の雄やすべての長男が死んだ
真夜中の官邸で皇居で網走でネカフェでホテルカリフォルニアで大きな叫びが上がった
アンディーも一人っ子だったので菓子折りを抱えて死んだ

エンドロールにイアンの次の歌が流れた

This is a crisis I knew had to come
Destroying the balance I’d kept
Doubting, unsettling and turning around
Wondering what will come next
Is this the role that you wanted to live?
I was foolish to ask for so much
Without the protection and infancy’s guard
It all falls apart at first touch

Watching the reel as it comes to a close
Brutally taking its time
People who change for no reason at all
It’s happening all of the time
Can I go on with this train of events?
Disturbing and purging my mind
Back out of my duties, when all’s said and done
I know that I’ll lose every time

Moving along in our God given ways
Safety is sat by the fire
Sanctuary from these feverish smiles
Left with a mark on the door
Is this the gift that I wanted to give?
Forgive and forget’s what they teach
Or pass through the deserts and wastelands once more
And watch as they drown by the beach

This is the crisis I knew had to come
Destroying the balance I’d kept
Turning around to the next set of lives
Wondering what will come next

 

 

 

#poetry #rock musician

BBQ

 

工藤冬里

 
 

メタフィジカルな線が抽象なのではない
ピンクの釦でブリキ缶は留められている
線の世俗は具象も郡上も問わない
美しい地を殺そうと米露は仲良くジュークボックスに入る
その時から白の奥に緑のストレスや不安が現れ始める
白の奥の緑が抽象だ
子供はハシビロコウなので
食器洗いはハシビロコウだ
花は三十五万種に増えた
愛してるかと確認されることのないようにしなさい
信頼を勝ち得るのは重い肉なので
顔の造りが違う 彫られた青蕨かスペード♠️のようだ
三十五万種に増えた花を楽しむ能力
一日一つ調べると九百五十八年かかるので
華やかなユリの服を着て
十万種の味で装う
全て反射すると白になるので
反射的に動くことが幸せにつながる 例えば
使えば性能が上がるあり得ない車の音のするガレージで
家主に住んで欲しいと思ってもらえるまで待つ
待つ間の喜びは可能か
可能だ 揺すって押し入れてくれる
ガスを止められた時バーベキューしてて分かったのは
欲しいものではなく必要なものが与えられるということだ
どの日も悪いが悩まない
信じてなくても欠落を反射する空の色
犬猫がいればオーロラも見える
待つ間の喜びによって喜びなさい

 

 

 

#poetry #rock musician

赤と緑

 

工藤冬里

 
 

恐ろしいフラッシュ・バックでオノマトペで言うと ギン という感じである
月が無くなるまで続く力について話していたが

おいちゃんが呼んどるけんまた後で電話するわ

ギン

血の汗
水槽の藻
冒涜者として死ぬことの奥には余人の窺い知れぬ言語的な実体が横たわっていた

希望の原理を拾い集めていたシティー・ポップスの時代は終わった

希望はない

ギン

 

 

 

#poetry #rock musician

アンディーの気苦労2

 

工藤冬里

 
 

パンデミックはハシビロコウにもハクビシンにも及んだ
しかしながら妻の猫は一匹も死ななかった
アンディは雑草の花の拡大写真を撮った

そして窯は製品を生み出さず代わりにTVが焼かれ大物司会者達が失脚させられた
痒みのためにユーチューバーも動けなくなった
画面から消し去ることも出来たがアンディーは頼まれた茶碗を作らなければならないので存在させられていた

しかし動物だけでなく植物も言葉によって殺られる時が来た
避難命令に従わなかった木は場外ホームランに頭を割られて死んだ
地球が誰のものか知らないまま薙ぎ倒されるのは草だった
アンディは予報を真剣に受け止める質だったので屋根を貫通するJ popを避けることができた

 
小麦粉は無くてもまだ米粉はあったので経済は動いていたがGoToも終わる時が来た
ネットはバグに食いつくされ遂に内調さえ国が壊滅したことを認めぬ官邸に食い付くようになった
アンディーはもはや食物を摂取した記憶に頼る他に空腹に耐える術がなくなった

続く

 

 

 

#poetry #rock musician

アンディーの気苦労1

 

工藤冬里

 
 

アンディーの人生は災い続きだった

最初はすべてのパブリッシングの行間や盤の溝の隙間が様式美として血に浸された
生者が死者に変わったことをメディアも故意に暴露してみせた
アンディーもゾンビに馴れた

次に死ねない死者が死んだ死者を主体の無いシュタイナーの薄笑いで薄めた
価値を減ずる地域通貨が畑の宝をデポジットとして要求した
アンディーも理科室でカエルの腿肉を焼いて食べてみせたことがあるが級友の叫びが授業料だった

それから土が棘となりパンデミックとなった
黒死病ルネサンスの鳥のマスクもアマビエもマニエリスムの病棟に埋もれた
アンディーも加計学園で生物兵器を作った

その後第二波が来てすべての芸能は潰れた
今度は製薬会社も操作できなかった
アンディーはバリアム中毒だったが妻は違った

続く

 

 

 

#poetry #rock musician

Get up, let’s go

 

工藤冬里

 
 

即興は自由だが一人でやる即興は存在しない、と言える
なぜなら第一に待ち受けている愚弄と拷問が耐えられる程度を超えているからである
これは体の弱さに起因する
第二に貫徹しようとすると即興の評判が落ちるからである
でき得るならば即興せずに通り抜けることはできないかという訴えがなされ
他者からの励ましが与えられるのもこの段階である
第三に完全に一人で負う岩がその全容を表すからである
私とはその段階に於いては一人になり切ることの不可能性と一人でしか負うことのできないミッションが合体した張り裂けるプシケーとなる
引き続き他者は存在するがそれに向けられる言葉は get up, let’s go という独語となる

 

 

 

#poetry #rock musician

The Dead Don’t Die

 

工藤冬里

 
 

このまま
明かし続けねばならないのか
どうか
もう
いいんじゃ
ないか
鳥は鳴く
もう

いいんじゃないかと

 
死者が
死ねないなんてのは
おかしい

ダッチオーヴンが
最高だと思う

ダッチオーヴンが
最高だと思う

 
きっと眠ってしまうだろう
つじつまが合ってなければならない
のに
残っている人たち
誰が王だったか
みんな真面目だなあ

情況に左右される喜び

作ったものに満足している
一時的なものは難しくない

 
そうか
生者が生きられないから死者も死ねないのか

 
特攻隊に入れられる夢見ちゃった

やだった

やだった

 
ダッチオーヴン

ダッチオーヴン

 

 

 

#poetry #rock musician

stoned

 

工藤冬里

 
 

色んな色の 石があって
外を窺い 出て行く時の
突出して 融けやすい
赤を選んで 雨足は
岬のこちら側に 介入させる
水や日光や動物や人体に 介入の証拠を見るが
四国の この湾の分人画の中の人々に
名を 知らせなかった
利を取らないで 道の駅化した老人喫茶では
知らせそうになって 吐いた
遥か遠くに霞む 感情の
連鎖を断ち切り 階級差を利用する
色んな色の 石を投げられる 
見えなくても ちゃんとしているには
もっと 強い動機が
必要です 良心に
色んな色の 石を投げられる
鯨は遠く 離れていった
ありがとう 悲しい気持ちにはさせたくない
色とりどりの 石打ちの浜で
考え続けて 安らぎを
繋ぎ合わせるキルト 愚かな人は
無謀で 自信過剰です 
青い枠が 囲っている
あの人だけは 滅びました
見えるものが 見える人
見えないものが 見えない人

 

 

 

#poetry #rock musician