豆腐

 

道 ケージ

 
 

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予備校にはどこも小さな洞穴教室がある。受験生を丸裸にしてまず生ぬるい風呂に入れいきなり冷水を眉間中心にかけ続ける。世に言う藤垈の術である。その後に糸瓜で過度の乾布摩擦。施術を学生と共にするため大抵の予備校講師は肌がつるりとしているか荒れ果てているかのどちらかである。洞窟を出られた珍しい生徒は当然目をやられている。中でやることが王義之「蘭亭序」の書写のみであるからだ。会稽山麓蘭亭の曲水の盃には小さな豆腐が重しとして据えられていたという。

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豆腐 摑み損ねた
白く穏やかな丸み
若々しい冷たい肌
ニキビない青白い発信
絹漉しの面倒がざわつく

豆腐鍛えて
厚揚げる作業
「白けりゃいいってもんじゃない
空0パリピで行けや(笑)」
葱ふり生姜づけ

豆腐の位置に立つことは
豆腐になることであり
日がなとうふである

いつものようにひょいと
摘めるはずなのに
摑み損ねて

爆発するとは

飛び散った豆腐
どんと机を叩き飛び散って
泣いていた

あまりのことに
慄く
卑しく粒をすくう
木綿ではないから
綺麗にえぐれる角

ごめんよ
にがり