足はつめたい *

 

墓参に

行ってきた
今朝

義母の月命日だった

女と
車で行った

帰りは

駅に車を置いて
歩いて

帰ってきた

義母は
二月十九日に

心臓が止まった
死んだ

それを見ていた
見ていた

月末になると

義母は
お金をくれた

隠れて
お金をくれた

全部

飲んでしまった

たまに間違えてわたしのことを
むっちゃんと呼んだ

みっちゃんだよ
というと

笑ってた

足はつめたい *
足はつめたい *

車を駅の駐車場に置いて

帰ってきた

川沿いを
歩いて

帰ってきた

 

* 工藤冬里の詩「11月」からの引用

 

 

 

雨と炎

 

原田淳子

 
 

 

あれは雨ですか
いいえ あれは炎です

不在の手紙を山羊が燃やしたのです

立ち上がる火柱は水の姿をかえた

野葡萄の海いろ
花に触れぬ蜘蛛の群青
青ざめた右下がりの文字
永遠に別れた緑

毒か、薬か

涙か、河か

嘘できれいなものと
泥でうつくしいものを交換する

貨幣は空まわる
贈与なんて、きれいすぎる

家を失くして
すべての地が庭となった
服は遺された譜
曝されたポケット
落とされた実は必ず拾う
拐かす蛇すらいない
苦さを頬ばる

夜ばかり描いているのは
朝がきてほしいから

夜にいるゆめを
朝につれてゆきたいから