峯澤典子
あさ 目覚めるまえの
窓辺に
小鳥たちが
濡れた花を落としていったから
ながいあいだ 会えなかったひとが
今日
そらを 渡っていったのだと わかる
交わしたことばよりも
交わせなかったことばは
ゆきに覆われた木の実のように
青いまま 残るから
夢のなかの
かじかんだ つまさきでも
さがせることも
あのひとは 聞こえない声で
さよなら と 言ったのか
おいで と 言ったのか
いつか
わたしも
ながい夢からさめ
そらを 渡りはじめる夜明けに
待ちわびた ゆきどけの窓辺で
ずっとさがしていた
青いままの ことばは
はじめて ささやく
さよなら
そして
おかえりなさい と