詩を読む

 

さとう三千魚

 
 

昨日は
市原さんと

望月さんと
会って

飲んだ

ずいぶんと
飲んだ

産む男 *
の反省会だった

反省はしなかった
飲みたかった

今朝
重い頭で

根石吉久さんの詩を読んでいた

浜風に書いてもらった **
詩だった

 こころがなくなって ***
 しまった ***

そう
根石さんは書いていた

根石さんは
ベッドで

こころがなくなってしまったことに気付いたのだ

午後に

痩せたモコを
美容院に連れて行く

シルキーのおじさんに爪と毛を切ってもらう

 

 

* 10月9日(月)に静岡フリーキーショウで開催した工藤冬里ライブ「産む男」のこと

** 浜風は、浜風文庫のこと

*** 根石吉久さんの詩「ベッドで」からの引用です

 「ベッドで」
 https://beachwind-lib.net/?p=11146

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

a fresh jawbone of a male donkey

 

工藤冬里

 
 

誰に請われて話すでもなく
自ずから膨らんで裂け目を作るスコーンのように
頼れるかどうか分からない整備工を眺めるように
こちらも佇む
背凭れを使わず
寛いだ表情で聴衆は聞き入る

港町に吹く風は
音を拾われて電波に乗る
うまくやり仰せているように思えても
漏れた火は陸を這う
死体はミンチにしてマックで喰わせろ、と風がいう
脳梗塞のドームに兵器が当たる
灰の格言が吹き荒ぶ
漁船が入ってくる
草が揺れる
水鳥は詠まれて
サシで話そうや、とヨブは言った
まだ本がなかった時に
感情が背伸びして
間延びした自販機が撤去される
語尾砂漠に立ち消える努力
怪獣が向こうを向いている
胸のない山と腰のない木が向かい合っている
黒と茶色が垂れている
医療用マスクは青く
高校生が打ち上げた気球から地球が写っていた

成立するかしないか
戸渡を渡るベースラインを決めながら
非工芸を行く
打っても打たなくてもよかった
入れ替わってもよかった
万能感に浸ってはいけない
武器とはいえないものを使って
手に入るものを使って
まだ水気のある雄ロバの顎骨a moist jawbone of a male donkeyを使って
エン・ハコレ(呼ぶものの泉)はレヒ(顎
骨)にある
痛かっただろうな
痛かっただろうな
その後のデリラ

 

 

 

#poetry #rock musician

舊居的塵埃

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

孩子們又復歸來,塵埃
不能閉眼
潛回古老你的黯黑
循環憤怒,漸次遲鈍斧斤
完全地引領我,用你失聲的歌
默念我們的舊居,失眠
青花瓷磗不時沉陷,執着
打字機低聲誦念退卻的時日
保護我,使我免受淹沒如奉節。
緩慢著籠罩的痛⋯⋯
大海之中是一杯我已飲盡的水。

 
2023年11月11日
九龍寨城南門外

 

 
 

・翻訳はこちらで
https://www.deepl.com/translator

 

 

 

まよう人

 

野上麻衣

 
 

ひとりでいればまよわない。
どれも自分のぶんだけ
きめて
かんがえて
する、こと。

ふたりになったとたん、
くらす人と
わたし、
ふたつをえらべなくなって
まよって
いらっとして
ひとりでいればよかった。

クッキーみたいに
はんぶんにわって
たベられたらいいのになあ

◯でも
△でもない
こたえでもなくて
なまえもない
でも、しってるもの。

ふたつの声を
おさらの上においてみる

ばらばらの声は
いつか
一枚のクッキーだったのかもしれない

 

 

 

ものを見つめる

 

駿河昌樹

 
 

けっきょく
ものをたくさん持っていても
ものをあまり持っていなくても
ものをほとんど持っていなくても
どうでもいい

ひとつのものを
よく見つめるときには
そのひとつしか見られないので
ほかにたくさん持っていても
ほかのものは
見つめられない

ものを見つめる
ということが
おのずと強いてくる
おそるべき
平等性
というものが
ある

なにも持ってないときには
きっと
指や手を
腕を
足先や
足裏まで
ほんとうに
よく
見つめるだろう

なにかひとつでも
持っているものを見つめていたら
指も手も
腕も
足先も
もちろん
足裏も
まったく見つめないだろう