また詩を読む

 

さとう三千魚

 
 

一昨日かな

また
詩を読んでた

そのひとは
コーヒーに砂糖は入れない *

と書いていた

詩にはふたつの川が流れている
故郷の川だろう

遠賀川と
六郷川と

ふたつ流れていた

昨日
高円寺の寺には強く風が吹いていた

詩人の通夜だった

帰りの新幹線で
眠ってしまった

夕方

海浜公園で海を見ていた

看板に
雀たち一列に並んでいた

 

 

* 松下育男さんの詩集「コーヒーに砂糖は入れない」のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

夏休み

 

廿楽順治

 
 

わたしとゆきこは
夢の駅前で
いい争いをしていました

おそろしさが
ただよっている

とうに死んでしまった子どもが
やってきて
「やめて」

といっているのに

しずかでなつかしい海辺のほうへ
きいろく濁って

これから三人
曳かれていくのでした

駅前でやきそばをたべたあと
わたしとゆきこは

生きかえった子どもと
耳をならべて眠っていました

ひとの死んだ夢を
盗んできたので
おそろしくしあわせなのです

 

 

 

葉跡

 

原田淳子

 
 

 

木陰に
迷子になったぼくのこころが光っていた

あどけない色をして
知らないこどものように

雲が船になったと、
風の便りが届いた

捻れて萎んだ朝顔は
青い螺旋
空へ還る階段

冬がくるまえに
おやすみなさい

ぼくも
こころのきみと船にのるまで
太陽をうたい
月を枕に
葉のしたで揺れていよう