廿楽順治
子どものふくらんだ胸が
空のむこうへ ひらかれていく
その町でわたしたちは
六十年あまりを暮らしていました
ももいろのスーパーがあり
扉の影は いつもこわれていた
おおきな冷凍庫から よたよたやってくる
わたしたちの子どもそっくりの鳥
仕方なく
胸は ふくらんでしまったのでしょう
ひらいた空へ
わたしたちはぼろぼろの機影のように
(入っていく)
けれども ふるい
じぶんの爆音のほかはきこえてこない
子どものふくらんだ胸が
空のむこうへ ひらかれていく
その町でわたしたちは
六十年あまりを暮らしていました
ももいろのスーパーがあり
扉の影は いつもこわれていた
おおきな冷凍庫から よたよたやってくる
わたしたちの子どもそっくりの鳥
仕方なく
胸は ふくらんでしまったのでしょう
ひらいた空へ
わたしたちはぼろぼろの機影のように
(入っていく)
けれども ふるい
じぶんの爆音のほかはきこえてこない
朝
川沿いを
河口へ
走る
ナメクジがいた
カタツムリがいた
アスファルトの歩道にいた
歩いた跡は
銀色に光っていた
河口には
ノラがいる
風に吹かれてる
・・・
** この詩は、
2024年6月21日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第6回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。
#poetry #no poetry,no life
2024年3月
お父さん、ボク、あさって床屋さん行きます!
行こうね。
―小林散髪屋にて。
コウちゃん、起きてくださいな。どうして寝ちゃったんだろうね。
お父さん、吉高由里子、2回泣いてたよ。
ああ、2回泣いてたねえ。
脳腫瘍、オデキでしょう?
そうだね。脳のオデキだね。
お母さん、アルファベットのIは、数字の1みたいだよ。
似てるね。
お母さん、ナラヌはイケナイのことでしょう?
そうですよ。
「コウさん、お仕事してください」って言われたよ。
誰に?
シバノさんだお。
いつ?
むかし。
コウ君、シバノさんて、男? 女?
おんなだよ。
シバノさん、まだいらっしゃるの?
もうやめたよ。
そうなんだ。
2024年4月
ボク、オクラ好きですよ。
お母さんも。あしたオクラ食べようか?
「ようこそ」って、なに?
よくきてくれました、よ。
コウ君、アイちゃんが来るんだって。
ぼく、ウレシイですお。会いたいですお。
お父さん、ぼく平成16年「金八先生」みましたお。
へえー、そうなんだ。
お母さん、タイムアップって、なに?
時間だよ、ということよ。
お父さん、起きてください。
いま何時?
7時だお。
分かりましたあ。
下に降りてください。
はい、はい。
お父さん、大好きですお。
コウ君、ふきのとう舎で、なんかやったね。なにしたの?
分かりませんお。分かりませんお。
お母さん、記憶って、なに?
覚えていることよ。コウ君、なんでも覚えているね。
海の幸って、なあに?
海でとれるいいもののことよ。お魚とか。
モノレール、ジエットコースターみたいですよ。
そうですか。
そうですよ。
お父さん、黒柳徹子と石原さとみの番組撮ってくれた?
撮りましたよ。帰ってきたら一緒に観ようね。
―「虎に翼」をみながら妻が、
かっこいい!わたしもあんな生き方したかったなあ。
今朝も
遅く起きた
河口に
行けなかった
近所の小川沿いを走った
ゆっくり
走った
ゆっくり走らないと
風が
見えない
ときどき
立ち止まる
佇む
揺れるのを見てた
ノコギリソウの
白い花の
揺れていた
ヤブガラシの花の
光っていた
以前
働いていたころに
新宿の甲州街道でヤブガラシの花と会った
傍らにいた
揺れてた
光ってた
今日
カサハラさんと
午後から車の荷台を平らにする約束をしていた
詩を
書かなかった
#poetry #no poetry,no life
2週間の檻を待ち望む
その間に殺される
フェンネルを植える
祈れないことさえ知られてしまった
一瞬で喜びを奪われる
朝忘れている間だけ
咳で破られる
それから
青森ACACに行ったのはそれからだった
波打つ行線のデザインや丸ゴシックが伝えようとする身振りは
放棄と冒険のオデッセイア(グリークヨーグルトの腐敗した記憶)であり意味ではなかった
親がないので自分で名前を付けた
伝えようとするのは名前の意味であった
原付でリンゴ畑を周った
自分が賢いとは思わないというのは大切だ
水屋にリンゴがあり
逆流する用水路の警めがあった
強制され、逆さになってソファからずり落ちている
もう半袖の大人の季節だな
逆戻りも成長である
青森は思ったより白い
道路脇の斜面に続く紫の花々はショウジョウバカマというらしかった
(じょんがらは寒いから早弾きになったそうだ)
(中嶋 幸治さんのリンゴとツバメの墓の作品は良かった)
それから
松山に戻ってきて雨粒が腕に当たったのはそれからだった
酸ヶ湯で鏡を見たら石膏デッサンのラオコーンみたいに寸胴になってた(腹筋はないけど)
どうせやめるんだからもう止めた方がいい
そう思った
あと、詩は時系列じゃないといけないのか?
そうだよ
あと、詩のために電気風呂を犠牲にしてもいいのか?
そうだよ
そう思った
いやそうでもないか
そう思った
#poetry #rock musician
その町は
青シャツで警備する
建物の周囲を一通り周ると
中に消える
与えられないし
受けてはいけない
鬱金に染まった石油由来の
思ってもみなかった嬉しい経験
毀れたロボットは枇杷色をしており
青梅はもう無かった
2種類あるcosmosの
敵対する方を工場としたので
蛍は消えた
太陽は闇に月は血に
雨は真っ直ぐ振り下ろされ
無数のバットが地を打ち叩いた
いつまでもジュラ紀の泰山木と
枇杷色ロボットは
透明なスライドショーによってラファに到達している
この黄色い手帳には
不作だった梅のみどりい記憶が書かれている
そして
雨が止むこと
空に手書き文字
泣き喚く危機
#poetry #rock musician
道端に
咲いてた
菫
咲いていた
可愛いね
青い花だね
海は
空を映して
青いよ
菫
きみを映す花だね
***memo.
2024年5月25日(土)、
静岡一箱古本市の日に水曜文庫での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第二十五回で作った77個めの詩です。
タイトル ”あたたかい海”
好きな花 ”すみれ(紫色の)”
#poetry #no poetry,no life
派手かしら
わたし
ガーベラが好き
ピンクや
イエローや
オレンジ色の
ガーベラがある
わたしは真紅のガーベラが好き
わたしはわたし
わたしガーベラ
***memo.
2024年5月25日(土)、
静岡一箱古本市の日に水曜文庫での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第二十五回で作った76個めの詩です。
タイトル ”わたし”
好きな花 ”ガーベラ(真紅の)”
#poetry #no poetry,no life