原田淳子
半分の朝 半分の夜
夜の森ペレリン 色の砂漠
生と死に
引き裂かれたわたし
裂け目のあなた
グラオーグラマーンの叫び声
半分の朝と半分の夜を重ねたら
永遠の海
そこでわたしは初めて
眠ることができるのだろう
きみが知らない
きみを葬ったそのときのことを
雪で埋もれたきみの墓のまわりを
一羽の尾長が
真っ黒な尾を振りながら舞い降りた
手向けられた花は凍っていた
尾長の彼はわたしのそばから離れず
歩きながら剽軽に尾を振った
わたしは笑って
尾とともに頷き首を振った
それが大地を刻むリズムであることを
生きてる彼は彼の体積で示した
彼のやり方で
それが鈴懸の木の実を揺らす歌であったこと
それが愛おしい歌と似ていたこと
終わりに吹く風は
始まりの歌であったことを
きみの土に口づけで伝えよう
まいにち、砂を噛む思いだと、
いつかきみは囚われた家の窓から呟いた
毒を培養する壁を
わたしはなぜ焼かなかったのだろう
送受信が緻密に発達したこの家を
わたしはなぜ壊せなかったのだろう
毒を薬に換える手立てを
まだわたしは探している
きみに似て非なる近しい者たちが
鈴懸の実を揺らす
ここそこに
これが時間なんだね
水と
歌が流れる
誰もが光の子どもだったことの標に
貝は傷ついて真珠を生むのですって
その光の粒は
埋もれても
汚れることはないでしょう
ゆきたいのは 春のむこう
触れても壊れることのない あたたかさ
その冬、
さらば青春の光を追いかけて
辿り着ついた季節外れの異国の浜辺
風に脱色された砂のキャンバス
空と海が溶けあっていた
黒いヒジャーブに身を包んだ女性が
風の試練に耐えるように顔を布に埋めながら
白いあわいの水平を歩く
生の動線に、存在の黒点
眩しくて暗い象徴の絵画
天と地が抱擁するあの白いあわいを
安寧というのだろう
ベン・シャーンの抱擁のように
哀しみと歓び
未来と過去
生と死が抱きしめあう
足跡が砂にきえてゆく
風が音を鳴らす
そこの石には穴があいてるのですって
きみの白い骨は
あの風の音がしたよ
砂を舐めて生きてきた音
きみの外から
わたしは口笛を吹いた
きみのいた時の音に重ねて
わたしはわたしの箱をつくる
来る時
来る鳥
わたしはそこへゆく
風が過ぎ去ったあとの抱擁を夢みて