brevity・簡潔

 

さとう三千魚

 
 

雨だった

女と
墓参にいった

モコは
家で待ってた

墓前で線香を焚いた

けむりは

低く
青く

たゆたった

霊園の裏山は濃い緑だった

中腹から
雲がかかり

裏山の

天辺は見えない

義母の
見開いた瞳を憶えている

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

断種断酒断首

 

工藤冬里

 
 

人の苗字がなくなって
自分の息子をボクと呼び
犬はみんなジョンだった
レモンは大きくなり過ぎて
人が登れるほどだった
空き瓶も山を成していて
ラベルはみんなおんなじで
タカラという字が見え隠れ
掘る必要もなく見出せた
土はテラテラみどり色
鶏を逆さに枝に吊り
鎌で自分の首を刎ね
断酒の前にダンスして
断首の後にもダンスした
断種断酒断首

 

 

 
#poetry #rock musician

その日の花を摘め

 

原田淳子

 
 

 

飛散させて

通りすがりのあなたに

種を宿せず
髪は肥料にもならず
春はわたしを啄み、
わたしを産み、
去ってゆきました

わたしの色は、夏のそれだと

秋は背を向けて、三億人の他人のよう

花弁をあつめて
心臓のふりをしてきました

Carpe diem

“その日の花を摘め”

あしたを信じてはならぬ.
きょうが終わるまで
わたしには永遠です

不滅の生には語るべきものがなく
原因と結果を永遠に繰り返す

 

飛散させて

わたしを摘むのは、雨ですか

濡れた初夏、
あなたは、
通りすがりの.