コロナ・ウィルス

 

たいい りょう

 
 

どんどん広がってゆく
ウィルスの感染拡大
ウィルスは、けつして死なない
別の人の体内で 生き続ける
彼らも生きるのに必死だ
遺伝子を遺そうとしている
私たちの同じ生命
どちらが勝つか
分からない
戦いは ずつと続いていく

 

 

 

「かかと」の 儚い人生

 

今井義行

 
 

いろいろ 理由(わけ)が ありまして

わたしは 半年振りに シャワーを
浴びることに なりました・・・

からだを 立たせたままでは
腰が キツイので
わたしは 浴槽の なかで
あぐらを かく ことにしました



わたしは 半年振りに シャワーを

浴びることに なったので・・・
髪を洗い 次に胸 両腕 というように
スポンジで 体をこすっていくと

たくさんの 垢がでてきました
それから そけい部 両足というように

下へ下へ スポンジを移動させて かかとに たどり着いたとき

「あーん」と わたしのかかとが
喜ぶような 声とともに よりいっそうの

垢を出したのです・・・
「どうしたの わたしのかかと?」
と わたしがわたしのかかとに 尋ねると

「もっと あたしをこすって」と

わたしのかかとが わたしに対して
求めてくるでは ありませんか

「ねえ わたしのかかとさん 
あなたは いま どうして おんなことばで わたしに話しかけてくるのですか?」

と わたしがわたしのかかとに 尋ねると
「あたし 別に オカマではありまシェン

あたし じぶんが いま はやりの

LGBTQ の どれに あてはまるか
なんて わからないで シュ シュ
シュッ シュッ シュッ・・・・

でも そんなこと
どーでも いいんじゃ ありませんの?

あたしは もうそんな事 いちいち
カテゴライズしても しょうがないと

思って いるのよ シュッ」

「そうだね わたしのかかとさん・・・

ところで その語尾の シュッていうのは
なんなの・・・?」

「いわゆる オノマトペ でシュよ」
「ああ そうなんだ

わたしのかかとさん もしかして・・・
あなたは 詩人では ありませんか?」
「詩人って 何でシュの?」
「詩人っていうのは ことばを虚構にして

造形化していく 人たちのことだよ」
「ああ そうなのでシュ ね

あたしって 陸上競技のアスリートじゃ

ないから 目や 腿や 胸みたいに

意識されることが 少ないじゃないの?

だから いままで ずっと からだの

脇役だから ほんとうに かなしかった
つらかった もしかしたら

気づかれないまま 火葬されちゃうんじゃ
ないかと 想像したら こわかった
でも きょうは 一所懸命 こすられて
はじめて スポットライトが あたった!
きょうは あたしの 記念日なのでシュ」

「ああ・・・いままで ずっと
気づいて
あげられなくて ごめんね
わたしのかかとさん・・・!」
「いいのよ 気になさらないで・・・」
「わたしに してあげられる ことは

ありますか?わたしのかかとさん」
「そうでシュね・・・」

「じゃあ もっと 強く 強く 強く

こすってください まシュか?」
「ガッテンダだ わたしのかかとさん!」

そうして わたしは わたしのかかとを
ゴシゴシ ゴシゴシ ゴシゴシ
魂をこめて こすり続けました・・・
そうしたら・・・

「あ あっ いいでシュ!
あっ いくっ いっちゃうでシュッ!!」

その瞬間 わたしのかかとは
たくさんのしろいものを 吹きあげました

それは 精子なのか 潮なのか
わたしには わかりませんでした けれど
わたしは わたしのかかとが
なにかに 到達した
ことだけは わかりました

「ありがとう ありがとう!!」
「いいえ どういたしまして
これからは わたしのかかとさんを
もっと 強く 強く 意識して

スポンジで こするからね!!」

「ありがとう ありがとう!!」



いろいろ 理由(わけ)が ありまして
わたしは 半年に 1度くらいしか

シャワーを
浴びることが できないのですが・・・

今日から わたしと わたしのかかとさんのあいだには
あたらしい きずなが

生まれたという わけなのです・・・