たくましい幻想曲 *

 

さとう三千魚

 
 

今朝
ふたりへ

葉書を書いた

詩人だった
ポストに入れた

それから郵便局で
亡くなった詩人のエッセイ集の費用を振り込んだ

その本の帯に
ぼくらは人生というやつに慣れていなかった **

そう
刷られてた

ぼくらという時代があったのだ
ぼくらという時代があったのだ

たくましい幻想はもうAIに任せたらどうか

クルマで
ディランの激しい雨を聴いてた

帰って花に水をやろう

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”右や左でみたこと(メガネなしでも)” より

** 清水哲男のエッセイ集「蒐集週々集」帯のことば(部分)

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

晩年様式

 

工藤冬里

 
 

前愛媛1区塩崎って新宿高校だったんか
覚えておこう
下からと上からが絡み合っての権力だから逃走線を引くのが厄介なんだ
声優やアニソンの世界は縁遠いものと思っていたが、一龍斎春水「講談金子みすゞ伝」の、悪の声色、善の声色を一身に引き受けて目先の発音の享楽に身を任せる処世からポストポストモダンを発送すると判るのは例えばこういう表層の堅さが何故不安を煽っていたのかということ
dj大江はこれらを処理する家電を模索していた?
https://youtu.be/ikyrzKBooYU
世界はメイヤスーヨーグルトだ
則ち攻殻としての容器と味蕾の記憶である
晩年や自決代わりの様式美

箪笥色のセーターを着て
大きな箪笥の前に坐っている
箪笥はニスで光っている
画面の中では手首や顔だけが薄い

青を羽織って
硝子戸の前に坐っている
巨木の園でブレイクの復楽を見ている
ひとりひとりにそのための水

声が出なくなって
水は
根は
ぽきぽき
秘書は去り
饅頭屋は潰れた
アウトドアグッズは小さなパンチの渦を巻き
変化のない洗濯機のように絶望している
鍵がない

 

 

 

#poetry #rock musician