姨捨にて

 

さとう三千魚

 
 

いつだったか

何年か
前だったか

根石さんと
姨捨の駅のホームから

千曲川の光るのを見たのだったか

根石さんは
母を

山の民だと
言ったのだったか

根石さんは

見ていると
詩だと

思える

山の人であり
詩人なんだと思える

なにも望んでいない
なにも望まない

あることのなかに
いる

いることのなかにある

千曲川が光っていたな
千曲川が流れていたな

その山は

姥捨ではなく
姨捨だった *

愛しいものたちを捨てたのだったろう

 
 

* 千曲市に実在するのは姥捨山ではなく姨捨(おばすて)山でした

 

 

 

#poetry #no poetry,no life