小関千恵
目を落とす
きみに落とす
探す 抜ける
それが旅だ
鏡 わたし
分からない気配
呼ばれていない
身体 確かに
生まれた日と
死ぬ日のことは
わからない
悲しみも 喜びも
わたしには 残らない
誰にも わたしを 愛せやしない
ただ感じる
ただ感じる
いま この震えを
ただ感じる
ただ揺れる
そのまま ただ解る
きっと そのまま忘れる
永遠の上 死の真下
月のような球体で
浮かんでいる
月のように隠れ
月のように現れる
裏側で
うたっている
目を落とす
きみに落とす
探す 抜ける
それが旅だ
鏡 わたし
分からない気配
呼ばれていない
身体 確かに
生まれた日と
死ぬ日のことは
わからない
悲しみも 喜びも
わたしには 残らない
誰にも わたしを 愛せやしない
ただ感じる
ただ感じる
いま この震えを
ただ感じる
ただ揺れる
そのまま ただ解る
きっと そのまま忘れる
永遠の上 死の真下
月のような球体で
浮かんでいる
月のように隠れ
月のように現れる
裏側で
うたっている
midnight
I’m looking at Shiroyasu Suzuki’s photo book “Hemisphere of Eyebrows”
all the photos in the photobook are taken with a fisheye lens
Mari in Kameido Tenjin
and young Harumi Kawaguchi is in the picture
there is also Hiroshi Watanabe
with his wife
there is also a naked Shiroyasu
in Shiroyasu’s study
he took it with the self-timer
there is also Hossawa Falls in Hinohara Village
water droplets are smoking
“If you shoot with a fisheye lens, it will be the same no matter who shoots it.
That’s what makes me feel better than that.
It’s nice that I don’t have to appear there. ” **
so
Shiroyasu writes in a photobook essay
there is a poet
there is a naked man
・
Don’t lean against the wall *
深夜
「眉宇の半球」という
鈴木志郎康さんの写真集を見て
いる
写真集の写真は全て魚眼レンズで撮られている
亀戸天神の
麻理さんや
若い川口晴美さんが写って
いる
渡辺洋さんもいる
奥さんといる
裸体の志郎康さんもいる
自宅の書斎で
セルフタイマーで撮ったのだろう
桧原村の払沢の滝もある
水飛沫が煙って
いる
“魚眼レンズで撮ると、誰が撮っても同じになる。そこがいい、と、
それ以上に素敵だという気分になれる。
わたしがそこに現れないですむのが素敵なのだ。” **
そう
志郎康さんは写真集のエッセイに書いている
ひとりの詩人が
いる
裸の男がいる
・
壁にもたれるな *
* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
** 鈴木志郎康 写真集「眉宇の半球」から引用させていただきました.
#poetry #no poetry,no life
差別的表現が取り沙汰されて久しい▶︎人を物のように見るのは良くないと声を上げる人が増えたお陰で世の中の雰囲気が随分変わってきたように思う▶︎差別的表現は感覚器官に対する暴力であるが▶︎暴力を暴力と感じることができない状態に置かれていることのほうが暴力的である▶︎では暴力防止のために近年アメリカの警察で導入されている「活発な傍観者」としての同僚の介入を促進させる教育プログラムは▶︎自分が暴力を暴力と感じることができない状態に置かれていることをも同僚に気付かせることができるかどうか▶︎ナチ時代の良心的傍観者の▶︎ユダヤ人を匿うという実践の実話から発想されたこの教育プログラムは▶︎暴力を暴力と感じることのできるレベルを対象とするリベラルの感性を超えることはできないとしても▶︎既に備わっている良心に訴えかける最善の試みであり▶︎最後の隙間を縫って善を行き渡らせるための最後のコモンの稲光である▶︎これによって差別は少し緩和されるだろう▶︎しかしそれでも差別の涙は残り▶︎それから▶︎そのまま終わりが来るのである
#poetry #rock musician
岸部四郎が死んだそうな
人生というものの
いい
表現者だった
とっても
いい
表現者だった
自己破産して
脳出血で倒れて
再婚した14歳下の若い奥さんを心臓発作で亡くして
それからさらに体がダメになって
どんどん衰えていく運命を嘆き
永訣した妻を惜しみ
もう会えないとぽろぽろ涙を流し
金持ちだったのに貧困に落ちいった身を嘆く
恥も見栄もどこへやらの
あられもない嘆きっぷりが素晴らしく
気持ちよかった
人生の表現者というのはこういうことだな
と感心して
女々しい嘆きっぷりに見入った
私小説家の本流に
ひさしぶりに真向かうようだった
身に降りかかる艱難辛苦を
これでもかこれでもか
と女々しく歌い続ける啄木流短歌の末裔
小林一茶流の俳諧の流れ
どうしてどうして
まだまだ此処にあり
という感じの
いい嘆き節
いい涙
惚れ惚れするような心身衰弱と
古典芸能そのもののような凋落ぶりを
たびたび見せてもらった
人生を演じる
とは
俳優たちが平気で口にする優等生文句だが
演劇や映画や小説など
所詮は創作という額縁の中だけのお座興
額縁から乗り出して
じぶんの心身を以て凋落と破滅と衰弱を演じる人は
なかなか
居やしない
衰亡の折にはどこかに隠れてしまって
老残の身を市井に晒すど根性ある生き方を
もう現代の人間はしない
そういう時代に
岸部四郎はずいぶん健闘した
いやいやいや
いい劇をながく見せてもらいました
葛西善蔵賞を拵えて
岸部四郎さん
あなたに今夜は贈呈いたしたく思う所存でございます
day before yesterday
came back
I came back from Akita
back
I brought Moko from a hospital hotel
Moco was happy
she ran around the living room and jumped
her heart bounced
yesterday morning
I walked to the estuary
there was the sea and stray cats
there were stray cat children
they were playing around
they were playing in the sun
they were in the sun
・
I’ll come right away *
一昨日
帰ってきた
秋田から帰ってきた
帰って
モコを
犬猫病院のホテルから連れてきた
モコは
よろこんでくれた
居間を走りまわって飛びついてきた
こころがぴょんぴょんと
跳ねた
昨日の朝は
河口まで歩いた
そこには
海とノラがいた
ノラの子たちがいた
じゃれて
遊んでいた
日射しの中で遊んでいた
日射しの中に
いた
・
今すぐ行きます *
* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
#poetry #no poetry,no life
にたい夜は寝たほうが良いと知っているのでなるべくそうーっと帰ってきたが
青物の月は俄然黝(クロズ)んで車を狙い澄ましていた
この透明はミャンマーの溝(ドブ)の上澄みだ
夜汽車が過ぎるとiPhoneはナイトモードになって
ひどい隔たりを連れた定冠詞が欲望を食べる
僕は夕方もうビールを飲んだ
利用されなかった部屋が終の住処と呼ばれ
血管を汚す外の黒が心臓を 圧迫する
チョコレートは男性名詞だ
夢とは反歌として家々が食べられること
眠りとは死を待つ夢を食べること
#poetry #rock musician
I’ve been home
to my brother’s sympathy
to Akita
I’ve been home
I went by connecting the Tokaido Shinkansen and the Yamagata Shinkansen and the Ou Line
At the birthplace
I met my brother
I gave the crab miso as a souvenir
my brother has a narrow esophagus
ice cream
water and
supplements
My brother had a little bit in his mouth
he is very quiet
talked
his voice seemed to leak
the white of my brother’s eyes was beautiful
my brother was quietly looking at the outside scenery
he has been my brother since I was born
・
How did you get to know him? *
帰省してきた
兄の
見舞いに
秋田に
帰省してきた
東海道新幹線と
山形新幹線と
奥羽本線を乗り継いで
行って
きた
生家で
兄に会った
蟹味噌を
土産に渡した
兄は
食道が狭くなっていて
アイスクリームと
水と
栄養補助剤を
少しだけ
口に含んでいた
兄は
とても静かに
話した
声は
風が
漏れるようだった
眼の白が綺麗だった
静かに
外の景色を見ていた
兄はわたしが生まれた時から兄だった
・
どのようにして彼を知るようになったのですか *
* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
#poetry #no poetry,no life