あぶない

 

道 ケージ

 
 

あぶなくってしょうがない
ご飯にネジを入れ
何に味をしめたか

カミソリが
ガリリと噛む
鮮血の赤飯
ぬるぬる丼

流石に死ぬぞ
「風呂場にあったから入れといた」
安全剃刀

お次に薬莢のふりかけ
「鉄分、体にいいよ」
どこで拾った
「富士演習」

おかず作れなくなり
久しいが
掃除が極端になる

一部を磨き大部を残す
ピカピカ光り
カビガビで真っ黒

衣替えも大変
あれもこれも捨てられ
本当の全とっかえだ

そんなにもあなたは
捨てたかった

カーテンが裂け
切り刻まれた隙間から
富士が白い

私は穴を掘って
そこに寝るわけだが

ウサギがカリカリ
でもその首ちょんぎって
何かにつけようとしている
可愛いからだ

歯軋りの街にダンプが
ウィドマンシュテッテン構造を
載せて月に引っ越す

少しの揺れで悲鳴をあげ
ドタバタ走って
本の山を崩す

鍛冶屋には無理だ
掃除屋も
何でも屋も無理だ

ダル絡みと言われ
脳汁を出す

どうも変だ
食卓に
洗濯物が並ぶ
山となったパンツやらシャツの間で
ヌードルすする
徹子の部屋を見ている

 

 

 

ペスコス大佐

 

道 ケージ

 
 

ペスコスペスコス
大佐は今日も文句が多い
寝言は猫の悲鳴
身銭を切る埋葬
犠牲をいたずらに
そこが狙い目だて

ペスコスペスコス
大佐は今日も感謝をしない
おかげ様よりオレ様は
一生忘八
「涙隠して人を撃つ」
どっちつかずの殺し屋家業
幽かなオーロラの音

ペスコスペスコス
大佐うだつあがらず
脚立届かず
前立腺も縮まない
猥褻な修理工が
生姜でこき下ろす
珍宝に当たります

ペスコスペスコス
大佐倒れて歯も無くす
どうもこうも撃てばよい
血だらけの口、獣の匂い
熱も何の撃鉄の冷え
銃身を短くしたぞ

ペスコスペスコス
大佐は酷い
三日使って前線に 
知ったことかと羊羹を
英雄気取りの若者に
ほら餞別
四日後、知ってか知らず
友を撃つ 
御免も言えぬ罠
わなわなわな

ペスコスペスコス
大佐は思う
死んだら終わり 
庭に穴二つ
黒コゲの応酬

ペスコスペスコス
大佐の怒りはわからない
不幸と病気自慢
好きでもないのに同居して
死にたいを3度言い
いいことないは12回
言ってはいけないことを言いまくる

ペスコスペスコス
お前大佐か
マクシミリアン少将の誰何
女装しとるのであります
口紅を誇らかに差し出す
口髭に唾液が光る

ペスコスペスコス
大佐の電話嫌い
料理嫌い掃除嫌い
ソファーに沈んで
孤立深めて円を切る
新月殺法虚空の枯葉
二つになったことを
知るわけない

ペスコスペスコス
大佐はいない
気まぐれなし冗談なし
挨拶なしに
おさらばだ

 

 

 

雫石

 

道 ケージ

 
 

雫石をどうすべきかは
皆知っているようだ
何もわからない私は
途方に暮れる

なんのためにあるのか
どこにあるのかさえ
わからない

調べてくれる田村は
二階の片づけに忙しい

橙の水玉模様
板状らしい

どこで知ったのかわからない
それをどうするのか
なんのためにあるのか
わからない

ともかくも
何かに必要らしい
雫石は何になる

あやめたい朝に
曇が映る
好都合のように

露がたまると
もう不吉ではいられない

走らされ
シャツを引き裂くと
それが合図のようだ

ハバロフスクあたりの
郊外の水で
犬の死体を見た

 

 

 

マンキー

 

鈴木志郎康 追悼

 

道 ケージ

 
 

ボク、マンキー
さるやない
マンキだってさ
マンキーマンキー
ラッキーなんだぜ
ボク、マンキー
返済終了!
おぅ、カッキー

生命保険確認の通達
もうすぐ満期

で、死んでほしい
と言われる
満期で支払い額が
下がるらしい

その前に死んでほしい
そう懇願され
やむなく死ぬことにした

ボク、マッキー
最後の言葉は
マンキー、ラッキー
またじゃあな

でもな
そう簡単には死なんで

「気合いで死ぬんや
 息飲んで死ね」

本末転倒だろ?
そりゃそうだが、聞いてない
こんなに額、下がるなんて
と妻

あんた末期
よく考えな、マッキ―
ジャッキー上がらん
タッキー翼折れ
どうする

「あたきなら死ぬ」
グッキー笑う
あやまりなく
殺める
雨やむ
見当つかない死に様よ

「大きな損になる
 やるだけやってみて」

まぁ、しゃあない
案外難しいんだぜ
それに自死は
降りないよ、保険

「だから気合いで
 マッキー
 なんとかしな」

そうかそうかと
息を詰め

ボクマッキー
あぁ、ラッキー!
アンラッキー!

「ドン ドン ドンガラガッチョ
 血の海だ
 やだなあもうこれだから」※

 
 

※ 鈴木志郎康「実践十円家族の皆様」より引用

 

 

 

カナリィ

 

道 ケージ

 
 

かなり大きい
あまり動かず
まりい
たりい

遠目からは箒草
黄土色に滲み
見ようによっては
くだん

従順なふんいき
高音のくぐもり
ポッコリ腹に
予言はない

心許して近づき
手がない
ピュイ
異種のけものである

干からびた嘴は曲がり
粟と稗の臭み

おぉ、カナリィ
カナリィじゃないか

「鼻が効かん
 雑巾の匂いと言われ
 何もわからん」

モップの腐ったような毛は
すでに黄色ではない

三里塚、上九一色では
囀るだけでワーキャー
止まり木で
すかす

今じゃ毎日
生きるに値しない音頭を
聞かされる

削いで尖って
も一つ削ぐと
丸まった丸まった
刃ない
警告できない

いないことを望む人たちを
選び
ちょっと戦う
喉に引っかけ
もうやめとき

滅びな

 

 

 

なぜうちに石膏のビーナスがあったのだろう

 

道 ケージ

 
 

親父は呑んだくれ
お袋は美術なんか、だし
当時の流行りか

おもちゃを撮った写真に映り込む
白いビーナス
ギリシャ美に遠い暮らし

町営のアパートの鉄扉に指をはさむ
あわてて指を拾って
お袋が縫い付けた
おかげでゆびはそこだけ
石膏のように固まる
ビーナス

ダビデと名付けた犬は
尻尾を噛んで
ぐるぐる高速で回る

もうこいつはダメたい
保健所が明日来るけん
と父

連れで行かんどっての声も弱い
噛みちぎった尻尾を埋める

階段は燕の糞で台無し
水筒を屋根に投げる
爪を噛んでいた
幼稚園カバンの紐を食いちぎる

もう物になる!
かねがねの人生
黒光して沈む

こけしと並んだビーナスは
家じまいで
トラキアの海に
濡れている

呆けたように振り返って
死ぬと思わず死ぬな

 

 

 

ちょう

 

道 ケージ

 
 

ちょうよ
ちょうよ
お前は伸びて
花盛りだ
 
薄紫に透けて
湿潤の奥に
とべよ
 
ちょうよ
ちょうよ
幼虫は憩室
でお休み

回盲の絨毛にくるまれ
上行、横行し、下行し結腸する

息するみたいに通り行く
息するみたいに嘘をつく

半月襞を経て無名講
背中を撫でてくれるだけ
それだけで

S字の断腸
「捩れてますよ!」
ドルミカム一本! 夢見いや
お願いミダゾラム! 諸星を呼べ

丁丁丁丁 丁丁丁
縄張りを意識する者が
勤めている

人参のようなもの二本
陶器の水に浮かぶ
どん、ツー、鈍、痛、鈍痛

肛門の先に広がる世界
えいん部まであとわずか
そこを曲がれば
死にたいの空が待つ
 
黒揚羽の羽はね
十二本目の指だよ
誰も読まない本を繰るためにね
目覚めてよ

 

 

 

ひとひと

 

道 ケージ

 
 

多摩川の堤を
走る人、走らない人、寝転がる人がいる
私は自転車に乗る
間に合おうとする人

見送る母、 見送られる子
朝だからね
(見送る息子、見送られる母)
手をつなぐ、つながない、つなげない
上る人、下る人
さよならもいわず

紫の花、花咲かない草
花でもなく花でないわけでもない
鳥、鳴いて
どの鳥かわからない
撃つ人、撃たれる人
鳥刺す人、鳥焼いて、鳥食って
羽を抜くお湯を煮詰めて、見つめて

打ち明ける者、聞く人、黙る人
うつむく人 、空あおぐ人
黒い、白い、赤い、青い、黄色い
橋の上に旗のようなものが
にじんでいる

眼鏡めがね
眼鏡で見る
眼鏡をはずせば見える
眼鏡をかけると見えない

肛門を見せに行く
肛門を見る人がいる
問いを作る人、答える人
壇上から、見上げる人を見る

泳ぐ人、溺れる人
魚はなぜ冷たい水でも
人はなぜ冷たい水では

腐ったものを食べて
吐く
腐ったものを好む
虫になる
ナマでもなんでも

オレは飛ぶよ
で、落ちる
色々、様々、ちがうから
(タヨー)

そういうことじゃない
そんなことではない

ただただ
気持ち悪い

 

 

 

おい

 

道 ケージ

 
 

おいおい
泣いて
樽が軋む
おいおいおいおい
秋霜の鏡

そうなのだけれど
おい、おーい!
とおい、とぉーい人
おいおいと追いかけ
おいつかない
ヨシキリはどう鳴くの
黄色い帽子が浮き沈む

おいおい
疲れて
坂上で見上げた雲
おいおい探す
「優しくなりたい、強くなりたい」
って歌聞いた
えぃえぃ

うえてねじ食う
「ネジしかないからしょうがないでしょ」
でも、歯は欠け
ういうい、なんでもあり
おい、いいかげんにしろよ
「おいはやめて」
えいが飛んでいる
あいはない

うえうえ 
おいおい
おえおえ
あいうえおい
あいは
おいは