利己的な遺伝子

 

一条美由紀

 
 


6畳の箱に住む住人
ゲームの山は優しく、
震える声は希望なのか
怒号ばかりの画面に、自分は
何者かに変わっていく。
怖さの中に
全てを簡単に単純に
ただ過ごしていく。

 


理想を追うほどに人は追い詰められる
最初は他人を否定し、
次に自分を否定して闇に閉じ込められる
だが、追いかけてきた先にドアはいくつか開かれている

 


半透明の子供が通り過ぎる
背中に落ちた枯れ葉が重い
石畳は過去の匂いを放つ

 

 

 

君の脚音を集めて飲んだ

 

一条美由紀

 
 


美しい言葉の奥に潜む自己満足のあざとさに
むしろ醜いままの方がマシだと思う

 


乗客は残り少ない
何処かへ行かねば、、
目的は必要なのだ
たとえ嘘でも

 


日は沈み影絵のなかに車は滑る
宇宙のことわりの中に
答えのない問いかけは増えてゆく

 

 

 

理解するには時間が必要

 

一条美由紀

 
 


私は神である
神は誰からも求められず、誰をも求めない。
神はまた何も求めず、あるものをただ消費し、
食い散らかす。

 


私から吐き出る言葉を食べてみて、、、甘いから。
私の視線を聞いてみて、、、闇だから。

 


長すぎる待ち時間
同じことを繰り返す未来を持っている

 

 

 

愛する人たちが、この世を去った時、
まだここに留まりたいと思うだろうか?

 

一条美由紀

 
 


あなたの瞳は別な世界を映している。
友達だった時間は、金緑石に変化した。
たくさん話そう。
たくさん話そう。
あなたの世界へ、
わたしも雲をすり抜けていく時が来たら。

 


答えは孤独からは生まれない
でも孤独は質問してくる

 


わたしの見えない触角で
あなたの見えない触角に伝える
”積み木の色は、青くて少し甘辛い”

 

 

 

列車を見送ったのは、ホームに記憶された影たちだった

 

一条美由紀

 
 


鬼は人間をバクバク食べるのが好き。
人間の悲鳴もちょいとしたスパイスだ。
ある時変な人間を食べてしまった。
そいつは食べてくれてありがとうといい、
そいつを噛み砕いている時、
うふふ、うふふと喜んでいた。
何十年何百年と年月は過ぎていったが、
鬼はあの人間の喜ぶ声が忘れられなくて、
ある日あの人間に変わってしまい、
食べてくれる鬼を探し続けることとなった。

 


言葉を探すのはつらい
考えてる時、頭の中に言葉はない
感覚の湖の中にドブんと沈み込み
そこでキラキラしたものを探してる
言葉で現実に戻そうとしたって
言葉は嘘つきだから
キライ

 


私が猫だったら、
いつも可愛い可愛いと言ってくれるのかな。
うっかりあなたの大切なものを壊しても
仕方ないか、猫だもの。と言って許してくれる。
私が猫だったら、
いつも側に来て優しく撫でてくれるのかな。
そしていつかあなたより先に死んでいっても
あなたには私との美しい思い出しか残らないのだ。

 

 

 

監督:「常に観客にはセンセーショナルに見せよう」

 

一条美由紀

 
 


あなたの欲しいものはなんだろう
欲しいものを捧げたら喜ぶのだろうか
与えることで私は嬉しいのだろうか

 


落とし物を見つけた
昔々捨てたものだった
捨てたものは年月の間に甘く変化していた

 


ずっと待ってる
ずっと待ってる

 

 

 

いらないものは捨てちゃえば?

 

一条美由紀

 
 


愛しい人と夢で話す
愛しい人に夢を話す
ソファに座る二人には
ソファに座る二人にも

 


科学を推論するのではなく、
自然の成り行きを見つめてる

 


何のテストなのか、
答えを書き続けている
わかったフリに意味はあるのか
快速電車と競争しているような馬鹿馬鹿しさ
疲れてるけど
やめられない。
息を止められない。

 

 

 

道迷い ふらふらカンレキ  蕗のとう

 

一条美由紀

 
 


嘘は快感となり、舌の上を転がっていく
腐敗した祖父は甘い香りを放つ
段ボール製のベッドはいつも私に優しい

 


旅行記は書かない
キウイをたくさんもらったから。

 


お互いの痛みと暖かさを手を触れた途端に分かり合えたらいい
全て自分のものにならなくても、欲しい時には
いつでも持ってる人から貸してもらえる
死は怖いことではなく、また生まれてくることができる

なぜ神様はそんなふうに人間を作らなかったのかな。
ま、
そんな世界に人間は居たくないのよね。

 

 

 

回れ独楽(こま) 散れ散れに我 ゆきゆきて

 

一条美由紀

 
 


王冠の下に泉があった
民は隠れている
王は言った
「出でよ、我が前に!」
白漠とした宮殿には王の声だけが響いた

 


栄えるものは滅びる
地下に眠るものはやがて起きてくる
静かに静かに彼らはやってくる
我々の乗る電車はいつか停車する

 


ネコは暖かい
ネコは柔らかい
ネコはひだまり
そして私の猫は天国にいる

 

 

 

また1枚 グレーの葉書 冬もみぢ

 

一条美由紀

 
 


古い現像液
鮮やかだった人がぼんやりと浮かんでくる
泡の中の手はちりちりと痛む
原罪はあえて気持ちがいい

 


ベッドに沈む 今夜も
愛と死と自己を知って
甘く腐っていく

 


カントクジ
ホウジョウ
イシノハラ
タクサンノ