川と駐車場

 

道 ケージ

 
 

登戸から
多摩川を左に見ながら
土手を下る
自転車の
いつもの帰り道

東名下を抜けると
それはある
ずらりと並ぶ車

川は小さく左に蛇行する
対岸の駒大グラウンドのサーチライトが
川面にまぶしい

「金の家」
ふざけた名前のマンションの駐車場である

見下ろすせいだろうか
すべて後ろ向きのせい
うすきみわるい
ずらりと並ぶ蓋は
虐殺のあとのよう

白い車
灰色、黒
白いのが多い

トランクには
骨壺が一つずつ
収まっている

駐車場って変だよね
学生に言ってみる
キョトンとしている

駐車場は本当はお墓なんだよ
いないのにある
そこにはいないものがある
いることを示すいないもの

白いエレベーター塔は
大きすぎるスツーパのよう

多摩川に
Nのように入るなら
ここと決めた蛇行地点ではある
冷たいのは嫌だから夏がよい

お墓に行く
こちらは緑ヶ丘霊園
多摩丘陵の端
桜並木が悲しい
そこにはいないものがある
咲いていないからというわけではない

そこから
多摩川を見る
あまり光っていない

Nは繋ぎとめて
自らを
流れないようにした

 

註 Nとは西部邁氏のこと。Wikipediaにその自裁の詳細がある。

 

 

 

たねとつき ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 35     aya 様へ

さとう三千魚

 
 

夕方の
西の山の

空に

木星と
金星は

いた

その下に
月もいた

月は静かだ
種は

夢の中に
ねむった

矢車草の
紫の花の

咲いていた

静かだ
静かだ

 

 

***memo.

2023年3月5日(日)、焼津 案山棒で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十回で作った35個めの詩です。

背後で、パパ U-Geeさんたちの歌が聴こえていました。

タイトル ”たねとつき”
好きな花 ”矢車草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

改装工事

 

工藤冬里

 
 

あゝ居ちゃあいけないんだ
トイレのない新居で
折り畳みベッドを抽き出し
初心者も熟練者も同じ籤を引いて
透明な瓦もあるのだと
南しかない南を向く
無秩序の反対は秩序ではないから
折角の花がと言い捨てて
外壁はもういいから
加工魚の夫を従え
うたう
籤を使ってうたえ
トイレのない家で

スケルトンの魚が上ってきて
舌足らずの大陸の食材となる
贖罪とは無人店舗の加工品を避けること
ドブ浚いの大陸を南へ南へ
その泳ぎに要点なんてあったのか
災厄の家を組織する五分搗きの米が腹の砂丘の半分に減り
顔の見えない救援を発酵させる
春よ春よ春の夜よ
起きてからでは間に合わなかったそれらしいAIアンビエントの安否
赤い水を衣類が吸う
祈りのない法蓮草と牛蒡から離れて
ハツの焼け具合をつっ突く
分画のインド人は多い筈だ
藍隈の選択肢は書面にする

 

 

 

#poetry #rock musician