有田誠司

 
 

誰かの意見に対抗出来るような意見も人格も
持ち合わせていない僕は 
ただうなずく事しか出来なかった

時には誰かの意見を借用して
さも自分自身の考えであるかの様に
振る舞っていた

自分の価値観を持たず 
いつも
他人の視点と尺度を借りて来なければ
何ひとつとして判断出来ない人間だった

他人の目に良く映る僕の形を
自分の中に創り出していた
人畜無害を装い 心の中の悪魔に蓋をした

歪な世界の枠組みの外
もうひとりの僕が立ち尽くしている
不確かではあるが感じる事が出来る
その単純な思考の一面性の裏にある
もうひとつの現実から乖離した思考が
終わりに向かう歩みを止める

本来 保持するべき核は表には無く
表面に有るものは凡庸な思考の維持に過ぎない
読解困難な難解な文章を何度も読み返していた

その悪文の中に全てが存在する
僕の核が其処にある

 

 

 

炭をつぐ

 

駿河昌樹

 
 

佐藤佐太郎の
第一歌集『軽風』に

炭つげば木の葉けぶりてゐたりけりうら寒くして今日も暮れつる *

とある

「うら寒くして今日も暮れつる」
から
なんと近代は
逃げ遠ざかろうと
して
きたことか

逃げたところで
「うら寒くして今日も暮れつる」

どこまでも追ってくる
どこにでも現われる

佐藤佐太郎の主張した
純粋短歌
とは
なんだったか?

「うら寒くして今日も暮れつる」
から
逃げないことか

思われる

この世の
ひたすらな
うら寒さ
すべてのものの
暮れゆくさま

そのなかにい続けて
ただ
炭をつぐ

炭をつぐ

 

 

* 大正15年作

 

 

 

10人称 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 66     mito さんへ

さとう三千魚

 
 

どこに
いるの

どこに
いったの

きみは
人称をなくした

時計まわりに
まわっていた

白い花
まわっていた

落ちていった
まわっていた

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った66個めの詩です。

タイトル ”10人称”
好きな花 ”時計草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

冬の青い空 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 65     miyuki さんへ

さとう三千魚

 
 

音が
なかった

たいらな

雪原の
うえには

青い空がいた

青いね
青いね

春になったら
梅の花が

咲くよ

青空のしたに
梅の花は咲くよ

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った65個めの詩です。

タイトル ”冬の青い空”
好きな花 ”梅の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

a prayer

 

工藤冬里

 
 

すべての願望は聞き入れられない
それは良いことだ
何一つ聞き入れられない
それは良いことだ
だから聞き入れられてはいけない
そう思うのは良いことだ
すべては聞かれてしまうから
そう思うのは良いことだ
聞かれないほうがいい
そう思うのは良いことだ
国を覆うバリヤーについて
地中の金本位制について
中国やイスラエルの武器の無力化について
偶像とデブリの分子化とU字塔について
淡水化について
シリカから生成する直方体の建造物について
記憶と奴隷化について
更地の果樹について
鍛冶屋と左官の移設について
石油由来の破棄について
麻糸製品について
銃口の内向きについて
告発と可視化される歴史サイトについて
学童の種取りとジャノヒゲの根の採取について
そしてすべての介入について
聞き入れられないのは
なんと善いことなのだろう

 

 

 

#poetry #rock musician

出会い ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 64     ryou さんへ

さとう三千魚

 
 

はじめて
会えた

きみと
会えた

ぐらり
回転したわ

あなたが
わたしで

わたしがあなた

匂いを嗅ぐ

血を繋ぐ
血が騒ぐ

忘れない
あなたの歌

忘れないよ

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った64個めの詩です。

タイトル ”出会い”
好きな花 ”金木犀”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life