尾仲浩二
そっと東京を抜け出して北の国へ行った。
テレビでは日本中が大雨で大変なことになって
東京での今日の感染者は二百人を超えたと言っている。
仕事だからしかたないと自分に言い聞かせても
ちいさな町でよそ者がカメラをさげてうろうろするのは気がひける。
駅前の温泉宿の窓を開け、時々走る列車の音を楽しみながら
ホタテクリームコロッケ、オーシャンサラダ、軟骨つくね、ひじき
それに赤ワインとスーパーの惣菜で早々と晩酌をはじめた。
2020年7月8日 北海道江部乙にて
At midnight
dog
Barking
Neighborhood
It’s a connected dog.
A black dog is connected to the door of a neighborhood house
Barking
That dog does big shit
I can hear the noise on the highway
insect voice
hear
daytime
first
cicada
voice
I heard
If humans are also connected, it will happen
That’s why Hong Kong people protest
Simply
Called Psyche
The person is there
深夜に
犬の
吠えている
近所の
繋がれた
犬だろう
黒い犬が
近所の家の玄関に繋がれている
吠えている
大きな糞を
する
高速道の騒音が聴こえる
虫の声が
聴こえる
昼間
はじめて
蝉の
声を
聴いた
ヒトも
繋がれたらそうなる
だから香港人たちは抗議する
ただたんに
プシュケー
という
そこにいる
*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.
即興は自由だが一人でやる即興は存在しない、と言える
なぜなら第一に待ち受けている愚弄と拷問が耐えられる程度を超えているからである
これは体の弱さに起因する
第二に貫徹しようとすると即興の評判が落ちるからである
でき得るならば即興せずに通り抜けることはできないかという訴えがなされ
他者からの励ましが与えられるのもこの段階である
第三に完全に一人で負う岩がその全容を表すからである
私とはその段階に於いては一人になり切ることの不可能性と一人でしか負うことのできないミッションが合体した張り裂けるプシケーとなる
引き続き他者は存在するがそれに向けられる言葉は get up, let’s go という独語となる
#poetry #rock musician
やっつけられると痛いでしょ?
痛いね。コウ君やっつけられたの?
やっつけられませんお。
オペ、手術でしょう?
そうだよ。
オペ、オペ、オペ。
張り切るって、なに?
頑張ることよ。
強引て、なに?
あらっぽく扱うことよ。
危険て、あぶないことでしょう?
そうだよ。
キケン、キケン、キケン。
ドのダブルシャープ、レでしょう?
え、そうなの。
そうなんですお。
ワタナベさんて、小山で生まれたの?
そうよ。
ぼく、鎌倉駅行って、回収券買ってえ、東急行って、お弁当とパン買ってえ、それから帰りますよ。
分かりましたあ。
わたし、オカジマ先生です。オカジマ先生、好きになったよ。
そうなんだ。
出張って、なに?
会社の仕事で、出かけることよ。
出張の英語は?
ビジネストリップだよ。
お父さん、白血球、息苦しくて吐き気するでしょう?
そうだねえ。
お父さん、かいちって、なに?
なに? かいち? 分かんないな。
―辞書を持ってくるコウ君
かいち、開智、知恵を開くですお。
へええ、開智ねえ。知らなかったなあ。
かいち、かいち、かいち、かいち
ヤマグチヒロコさん、結婚して子供生んだの?
そうなの?
そうだよ。
あい変わらずって、なに?
ずーと同じ、だよ。
マツシマさん、去年「必ずいる」って言って、泣いちゃったんだよ。
そうなんだ。
チエ先生、手え振って「さよなら」言ったよ。
そうなんだ。
そそっかしいって、なに?
あわてんぼうということよ。
お父さん、連佛さんのドラマ、録画してくださいね。
分かりました。バッチリ録画しますよ。
録画してね。ロクガ、ロクガ。
お父さん、こんど連佛さんのドラマ、DVDにしてね。
はい、分かりました。
仁狭ヘルパーの場所は「タイヨウ」でしょう?
介護施設「タイヨウ」だったね。
くらげ、ジェリーみたいでしょ?
そうだね。
お母さん、これ、こぼしていいですか?
いいですよ。
呪うって、なに?
あいつをやっつけよう、と祈ることだよ。コウ君、誰かを呪ってるの?
呪ってませんお。
お母さん、タイミングって、なに?
ちょうど良いときよ。
ねんごろって、なに?
心をこめて、だよ。
連佛さん、警察のお仕事しましたよ。
どこで。
「盤上の向日葵」で。
えーとねえ、サカイ先生、お母さんによろしくね、って言ったよ。
そうなの。
一人ひとりって、なに?
一人ずつってことよ。
お父さん、泣くはサンズイに立つだお。
そうだね。
お父さん、立つの英語は?
スタンダップだよ。
タツ、タツ、タツ、立ってご覧。
お母さんユカリさん、バージンロード歩いた?
歩いたでしょう。
わたしはマサミ先生です。
こんにちはマサミ先生。
お父さん、戦争の英語は?
戦争はウオーだよ。
戦争嫌ですねえ。
嫌だねえ。
お母さん、公平って、なに?
みんなと一緒よ。
お父さん、ぼくお父さんと仲良く暮しますお。
そうですか。仲良く暮そうね。
お母さん、予感て、なに?
感じることよ。
お父さん、オガワ君のお父さん、おうちでお仕事してるの?
そうだと思うよ。
お母さん、花盛りってなに?
お花がいっぱいのことよ。
大量にって、なに?
たくさん、ということよ。
ぼく、連佛さんの声、好きだお。
そうなんだ。
困るって、悩むこと?
まあそうねえ。
最悪って、なに?
とっても悪いことだよ。
経験てなに?
いろいろやったこと。コウ君、いろいろ経験したでしょう?
ないですよ、ないですよ。
お父さん、入るとき、「お邪魔します」でしょ?
そうだね。
当たり前って、当然のことでしょう?
そうだね。
today too
It was raining
Yesterday
The day before yesterday
And the day before
It was raining
yesterday
I used to decorate the Buddhist altar
today
in the evening
We Lit a fire at the entrance
Woman and moco
Lit fire
I sang with OjareOjare
・
We wait for the dead
We welcome the dead
今日も
雨だった
昨日も
一昨日も
その前の日も
雨だった
昨日は一日
仏壇の盆飾りをしていた
今日
夕方に
玄関で迎え火を焚いた
女とモコと
迎え火を焚いた
おじゃあれおじゃれと歌った
・
わたしたちは死んだ人を待つ
死んだ人を
迎える
*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.
このまま
明かし続けねばならないのか
どうか
もう
いいんじゃ
ないか
鳥は鳴く
もう
いいんじゃないかと
死者が
死ねないなんてのは
おかしい
ダッチオーヴンが
最高だと思う
ダッチオーヴンが
最高だと思う
きっと眠ってしまうだろう
つじつまが合ってなければならない
のに
残っている人たち
誰が王だったか
みんな真面目だなあ
情況に左右される喜び
作ったものに満足している
一時的なものは難しくない
そうか
生者が生きられないから死者も死ねないのか
特攻隊に入れられる夢見ちゃった
やだった
やだった
ダッチオーヴン
ダッチオーヴン
#poetry #rock musician
汀の角度に
打ち上がった
鋼鉄の船
喫水線がにきび面を
傾いでいる
乾いた風が
一つ一つの穴を点呼し
魚臭い息を
鳴らす
雌雄同体であるフジツボは
近接した個体と交尾受精し
ノープリウス幼生から海中で6回脱皮
キプリス幼生となる
餌食みしないため
かのダーウィンは「動く蛹」と呼んだ
剥がしてやるよと
石でトントン
虚ろに空洞がなる
白い粉がお悔やみのように
散らばる
死んでも剥がれぬキプリスセメント
父と母とともに流され
黒潮とまぐ合う
うちとけるとでも
そんな朝はもうないから
だましだまし貼りついてる
生きてるんだか死んでるんだか
光る子が草薙の不義を
隠し通すように
蔓脚をびらびら旗めかして
死ねないんだよ
死ねない
死ねないなぁ
練馬の小さなの庭の
道端縁石にかぶるように繁茂する
無秩序な藪にいつからか
手のひらに乗るほどの獏が棲みついている
そうだ あの夢を食うという
獏だ まごうことなき あの獏だ
ほんの5cmほどの体躯だが
どこから見ても 獏としか見えない
この獏さんも世の中の獏さんと同様
まるで悪びれず 泰然自若としている
鼻面の長さうっとり 夢見てるような眼差し
夢を食うのだから当たり前か
でもね ことしはコロナ感染豪雨被害のせいか
リュウノヒゲの藪の中から
長い顔だして露に濡れて なにやらもぞもぞ
となりの柘榴の根っ瘤に棲む おばあの蝸牛に
不満そうに なにか話しかけたいのだ
なあおばあ せつなくなるなあこのご時世
おれは見ての通りの獏さん稼業の夢追いもん
長い鼻面がいのちの風体なのに
オレにも冗談のようなアベノマスクが届いたんだ
やめてくれ 鼻面想像力に蓋をされて
好物のシュルレアルはぐらかしの夢も
浮世絵風のせせらそそりの艶笑譚夢も
要するに大好物のメルヘングルメにありつけないなんて
この世界はどうなるんだ
新しい生活様式とかいっても
夢が食えない生活様式なら生活しなくていいよ
恥ずかしそうにさらに隣りの
柘榴の根っ瘤に鼻すりすり
おばあ蝸牛が獏さんに問いかける
獏さんたら さっきは何の夢を食らったんだい
なんだか 他にわけあるんじゃないのかい
ああおばあ 最近姿をみないキリちゃんの夢だよ
どこかに旅だった隣人麒麟のキリちゃん
去年の夏には柘榴の瘤の上に体長7cmほどの
麒麟のキリちゃん すっくと立って美しかったのに
今日の今日とて 霧が流れる安曇野の紫陽花の群落で
やはり首の長いキリオ君と首をからませながら
愛を語らっている いやな夢をみたんだ
獏さんは伏し目がちにこういうのだ
すると柘榴のおばあ蝸牛は頬赤らめて
カラダうねうねしながら低い声で そうよね
獏さんたらキリちゃんのこと好きだったのよね
最近見かけないと思ったら キリオ君とだったのね
仕方ないかもよ こんな胸糞わるい時代だもん
同類相憐れむとか言うじゃない ちょっとちがうか
でもきっと帰って来るわよ
キリちゃんは獏さんの夢の話聞くのが大好きだったから
獏さんのちょっとHな夢の話聴いて笑い転げて
柘榴の根っ瘤から滑り墜ちたりして 笑ったよね
あたしはふたりは結婚するって思っていたくらい
獏さんとキリちゃんは仲睦まじくしてたじゃない
だいたい麒麟の男なんて 名前だけ麒麟児とか言って
ただ長いだけの役立たずだって 蝸牛界の噂よ
キリちゃん そのうちしょんぼり帰ってくるわ
空白空白空白0✶
高田渡がプロデュースして作った、山之口獏の詩のトリビュートアルバム『獏』は、高田渡の盟友と言ってもよい沖縄と内地の歌唄いたちが渾身の曲を捧げた名盤だが、この中に佐渡山豊が作曲した「獏」が収録されている。生で聴いたことはないが佐渡山豊、沖縄の風わたるそうそう人生の掠れ具合がただもんじゃない、素晴らしいミュージシャンだと思います。この詩のなかの獏は豚と河馬のあいのこみたいなユーモラスな図体でのっそり飄々、動物博覧会で初見参の折、夢を食べていると思って餌箱覗いてみたら果物や人参なんかたべているじゃないか、でも夢のなかにもこもこ出てきた大きな獏は悪夢でも食べたのかと思ったら、原子爆弾や水素爆弾をぺろりと食べて地球がぱっと明るくなったんだそうだ。愉快だね、獏さんの獏、うちの藪の獏さんも、コロナや自然災厄の悪夢をぺろりしてほしいものだ。すべての詩は山之口貘、作曲に高田渡、佐渡山豊の他、つれれこ社中、大工哲弘、石垣勝治、ふちがみとふなと、嘉手苅林次、大島保克らが加わったアルバム全体が、しみじみ深くとぼけて懐かしく、文句なく椌椌愛聴盤のひとつだ。高田渡がこのアルバムを作っていた頃、渡氏とはよく会って飲んだものだった。自分のソロアルバムを作っている時より余程楽しげだったな。友情と冗句と笑顔に刻まれたあの獏の時間を思い出している。
空白空白空白0✶
ところで麒麟のキリちゃんはまだ帰ってこない
リュウノヒゲの藪から出たり引っ込んだり
我が家の獏さんは長い鼻面もぞもぞさせて
柘榴の根っ瘤のおばあ蝸牛と
だれにも通じない夢のお手玉なんかして過ごしている