入院した日本語

 

工藤冬里

 
 

顳顬から眼底にかけて疼き
薄らと吐き気を伴う
青寄りのピンクを引っ掻いて地が見えるのがアートっぽいがそれどころではない
白を巻いたきみは白本語を話さない
ただ家を燃やしたいだけだ
白の家を燃やす
束の間の無痛の他は
ただ白を燃やしたいだけだ
ただ日を燃やす
無痛分娩した憎しみを育て上げ
大学に送り出す
箱はピグメントの黒
扁桃腺に舌の先を当て
熱燗で作るカップ麺
きみは擂り下ろされて
白本語を話さない
エイの言葉を話す
エイはひらひら話す
「ああすがすがしい
戦争前夜の黒い溝の上澄みのような気分だ」
太い道が出来ちゃってるけどほっといたら治るんじゃないの
通行止めにするには警備員雇わないと
バイパスは作れない
先に新道作ってから後で旧道作るようなものだから
役者の自殺が多いのはそういうことか
重層的非決定へ、などと言えていた余生も過ぎ
日本語は多重を生きられなくなってきたのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

He was dressed in an old coat that had seen better days.
彼は使い古された上着を着ていた。 *

 

さとう三千魚

 
 

before noon

He was at the desk
suddenly

He wanted to stare at the sea

He is empty
so he wanted to stare at the sea

He didn’t take the dog Moco

on the beach
the wind is blowing

seagulls were flying

the waves hit the tetrapod and were breaking

there were clouds over the distant peninsula

the man
was blown by the wind

He was dressed in an old coat that had seen better days *

 

 

昼前に

彼は机の前にいて
ふいに

海を見たくなった

スッカラカンになっていて
それで

海を
見たくなった

彼は犬のモコを連れていかなかった

浜辺には
風が吹いていて

カモメたちが飛んでいた

波がテトラポッドにあたり砕けていた

遠くの半島の上には雲がいた

その男
風に吹かれていた

彼は使い古された上着を着ていた *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life