あきれて物も言えない 16

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 
 

工藤冬里の ” L’Autre Cap ” を聴いている

 

もう朝なのかな。
西の山が青緑に空に浮かんでいる。

夜中に目覚めて、工藤冬里(Maher Shalal Hash Baz)の”L’Autre Cap”というCDを聴いていた。

“L’Autre Cap”

“その他の岬”ということなのかな。

このCDには工藤冬里がマヘル・シャラル・ハシュ・バズとしてアメリカのオリンピアのキャルヴィン・ジョンソン主宰のKレコーズのスタジオで2007年に録音した27曲が入っている。

“Suspended Season” “Portland Town” “Kamakura” “How Long Will You Forget Me?” “Misaki” “Eve, Mary, And Juliett” ” Moving Without Ark “などなど、
生々しく滴る生命の音がある。

その”Misaki”からは、中原中也の北の海が見えるのだろう。
北の海には灰色の浪ばかりが見えるだろう。

“Suspended Season”は”吊り下げられ延期された季節”とでもいうのだろうか?
2,000年以降の現在まで続く新自由主義グローバリズムが浸透しきった世界に生きるわたしたちの生に反響する叫びをこの曲は持っているだろう。

吊り下げられて人々は生きている。
そう、思える現在です。
そう思える現在が20年も続いていると思えます。

10月からは「GO TO トラベル」の東京発着が許可されるということです。
それは希望となるでしょうか?
われわれはわれわれの地獄に薄皮を掛けて見えないようにすることを希望と認めるでしょうか?
かつて「保育園落ちた、日本死ね!」という主婦の言葉がありました。
その言葉をブログに書き込んだ主婦もまたこの薄皮に覆われた世界を生きていることでしょう。

2020年9月16日に、菅内閣が発足しました。
秋田県南部出身の誠実な方だそうです。
安倍政権の政策を「継承」される方だそうです。
菅内閣発足直後の支持率が65%だそうです。

「行政改革」も「デジタル」もおそらくは日本を覆うための薄皮でありましょう。

 

もう朝になりました。
西の山が青緑に青空に浮かんでいます。
西の山は幻影のように青空に大きく浮かんでいます。

いまは、工藤冬里の “How Long Will You Forget Me?” という曲を聴いています。
あなたはどれくらいまでわたしを忘れているの?
工藤冬里の歌う声は痛切です。
それは幻影でしょうか?

あきれて物も言えません。

 

作画解説 さとう三千魚

 

Maher Shalal Hash Baz / L’autre Cap (2CD)
https://www.reconquista.biz/SHOP/EPCD0034.html

 

 

 

王国 Ⅱ

 

原田淳子

 
 

 

夜に濡れてゆく
硝子玉の音いろ

鈴虫たちが
銀の環を潜り
いのちが土に頬よせる

泉団地行きのバスが通り過ぎれば
野放図な蔦が彼らの王国を孕む

重すぎる未送信の手紙の
耐えられない存在の軽さ

涙すら流れない虚無

裸足に触れる
星疼く夜

虫たちのマルチチュード

 

 

 

Above all, don’t tell a lie.
何よりもまず第一にうそをつくな。 *

 

さとう三千魚

 
 

last night

midnight

woke up on the sofa

so
I wrote a poem

then
I started working on an essay, “I’m stunned and can’t say anything.”

I was vague in front of my desk

no no
I was reading the newspaper

I was listening to Taku Hayashi’s “AURELIA”

“Seal love”

I was listening

I was staring at the west mountains beginning to appear blue

there
lily flowers bloom

birds fly

Above all, don’t tell a lie *

 

 

昨夜は

夜中に

ソファーで
目覚めた

それで
詩をひとつ書いた

それから
“呆れてものも言えない”という短文に取りかかって

机の前で
ぼんやりしていた

いや
新聞を読んでいた

林拓の”AURELIA”を聴いてた

“あざらしの恋”

聴いてた

西の山が青く浮かびはじめるのを見ていた

そこに
百合の花は咲き

空の鳥は飛ぶ

何よりもまず第一にうそをつくな *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life